2] パネルディスカッション
パネルディスカッションは、西南学院大学の川上宏二郎教授の司会により行われ、各パネリストからいろいろなご意見が述べられましたが、その要点は、司会の川上教授の締めくくりの挨拶の中に凝縮されておりますので、その一部を抜粋してご紹介させていただきます。
『行政は法律に定められていれば、そのとおりのことをしなければいけない。しかし、現実に困っている人がいるのを、法は見過ごすことができるのか、という切り口もまた大事である。やはり、苦情を申し出る、というのには本人の何か困った事情があるわけだから、それを真摯に受け止めるという姿勢、そのこと一つにも行政苦情救済の意味は大いにあると考えられる。したがって、こういう問題を解決する時には、いろいろ知恵を出し合って、直接関係する法には違反するかも分からないが、もっと大きな法から見れば、違反はしない、という工夫をするところに、また、一つの活路があるのではないか。
行政苦情救済制度は、訴訟と違って、決めどころがない。つまり、解決のだめ押しがない制度である。しかし、そこを何とかしなければ、折角相談に来た人に満足を与えられないことになり、この制度の有効性を考える上で、非常に大切な点である。行政相談制度が比較的にうまく機能しているのは、行政監察が背後にあることが一つの理由であると思われる。苦情救済機能を有効に働かせるためには、一つだけで押すのではなく、それを後押しをするような、もう一つの仕組みとワンセットにすることが必要であると思われる。』
3] 招聘者と行政相談委員との意見交換
ジャコビー氏との意見交換会には、9名の行政相談委員が出席されました。
意見交換会においては、出席行政相談委員の方から、相談事案の受付の現状や課題、行政相談委員制度の周知方法、相談事案の処理の方法等について発表されるとともに、それに関連するカナダの状況について質問が行われ、ジャコビー氏がそれにお答えになるという形で進行しました。
ジャコビー氏は、日本で行われている「ミニ合同相談」のようなことは行った経験がないが、数人のスタッフを連れて地方へ出張し、苦情や意見を聞くという活動は行っていること、また、広報活動については、テレビやラジオで定期的に毎週1回(5〜10分間)の番組を使って行っており、毎年1回は必ず自分がテレビに出演してオンブズマンの活動について話をしているほか、年次報告書や特別報告書を出版したときなど、様々な機会を捉えて広報を行っている旨説明されました。
また、ジャコビー氏は、国民にオンブズマンのことを知ってもらう、ということに止まらず、国民がオンブズマンをどのように評価しているのかを把握するための調査を行い、調査結果の内容を検討し、改善策として取り上げていくものがあれば、これをまた公表しているとも言われておりました。