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ケベック州のオンブズマン法の中で、オンブズマンの権限として、ある分野に対してオンブズマンが勧告をした場合、担当省庁の長がそれを実施しない、又は、実施しない理由を明確に提示しない場合は、オンブズマンは内閣に対して上訴出来ることになっています。また、州の議会に対してもオンブズマンは、年次報告も含めていろいろな案件の報告をしていきます。もちろん議会でいろいろな政党の人達にもその情報は伝わります。その内容を公表するということです。公表する方法は文書も印刷物もありますし、記者会見という方法もあります。公表するということが非常に大切です。人間の常、官僚の常として、他人に分からないのであれば、なるべく変更はしたくない、動きたくないということがあるでしょう、そこを動かす大きな力として公表するということが必要です。

ただ、勧告をしていく場合、行政としても、いろいろと考えた上でプログラムを導入しています。それに対して、あえて批判するわけですから、時によっては担当官に対する個人的な批判のように聞こえてしまい、気まずくなるような場合もあります。そこは、非常に難しいところではありますが、なるべくそうしたことが起らないような形で変化を起こしていくということが大切です。その中で大切な役目といいますと、日本でいうと女性相談委員であると思います。行政相談委員たちがプロアクティブに活動をしていく、そして決してあきらめないということが大切です。

 

浅井局長:どうも有難うございました。大変有意義で盛りだくさんのディスカッションでした。最後に、鎌田会長の方から感想を一言お願い致します。

 

鎌田会長:本日、先生方からのご質問もジャコビーさんからのご回答も非常に示唆に富んだものがあり、私自身が大変良い勉強をさせていただきました。特に、先生方の言葉の中に、これから考えなければならないことがあると感じました。

昨日の、ジャコビーさんのお話の中に、オンブズマン制度はここ数十年の間に驚くべき発展をしてきたという言葉がありました。それは、それぞれの国の、経済の状態や、統治構造や、教育の程度であるとかの、いろいろなものの違いの中から、バリエイションを持ちながら発展してきています。すべてがオンブズマンという言葉一つになってしまいますが、ワンノブゼムとして私達の行政相談委員制度もあり、あるいはフランスのようにメディアトール制度もあるでしょう、あるいはイギリスのようにいろいろな制度があるでしょうが、お話を伺っていて、悩みとするところ、私たちが追い求めるところは一つであったということを、しみじみと感じました。

国があり、行政がある以上、常に国民が何を考えているかということを捕まえなければ、国や行政は動かない。これは、どのような社会、時代も同じでしたが、何故、ここにきて現象としてのオンブズマン制度が驚くべき発展をせざるを得なかったか、というところに、ジャコビーさんのいわれる原点があるのだろうと、私達は改めて考え直す時期にあると思います。

どんな立派な組織や制度、法律を作っても行き着くところはそれを動かす人間であるということが最も大事なことであると思います。行政相談委員として役割を果たせるのは、それぞれの人格であると思います。ジャコビーさんの哲学を聞かせていただいても成る程人格であると感じました。

最後に一言、申し上げたいのは、今回の会議は、黒子に徹して働いてくださった、管区局の職員の方々がいなければ成功はあり得なかっただろうということであります。

有り難うございました。

 

 

 

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