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ところが、このあたりも変わってきました。もっと情報を公開しようという流れ、力が非常に大きくなってきました。公共機関で働くお役人も、もう役所の中だけで仕事をすればいいというのではなく、国民と同じところで、壁をなくして国民との関係づくりに力を入れなければならないということは、公共機関でも認識が強く高まってきているところです。

もう一つ、ワンストップ化というお話もありましたが、これは、非常に良い考えですし、理想的なアイディアともいえますが、現実にどうかといえば、簡単には導入できない側面がたくさんあると思います。

例えば、具体的な窓口を設けるということになれば、官僚的なことが関わってきますので、かえって問題が増えるということもあります。ここが思案のしどころでもあると思います。一つの考え方としては、いろいろな関係機関、民間も含めてですが、そういう所と行政相談委員の方がしっかりネットワークを作る。例えば、行政相談委員の所に持ち込まれた相談について、対応できない時にはスムーズに紹介が出来るとか、また紹介しただけに終らず、その後どういった対応を受けたか、その対応に満足しているか否かをしっかり行政相談委員の方に返してもらう。それを基に次の対処へのステップを踏む、といったように行政相談委員も含めた関係諸機関との機能的なネットワークが非常に大切であると思います。そうすることによって、いろいろな組織、制度の有効性、効果を上げていくのだと思います。

一人の人がある相談を持ちかけて、別のところに行ってくださいと言われても、それが機能的なネットワークの中で行われているのであれば、あちらこちらに振り回されるという感じ方はしないはずです。現実にはそうでないところもあるかも知れませんので、今いったようなアプローチが有効な方法だと思います。

もう一つケベック州の外国人に対応するプログラムや組織があるか、というご質問ですが、具体的に特別な対応のプログラムというものはありません。ただ、事務所のスタッフに対して、事務所にはいろいろな方が来ますから、それぞれの一人一人が持つ文化的背景によって彼等の期待も違ってくるのだというしっかりとした認識を持った上で、良い解決策がないかを考えるように、常に言っています。来る人をすべて同じ土俵で考えることは、背景が違いますから不可能です。それぞれの価値観であるとか、ニーズにしっかり心をおいて対応していく。国によってその法律に従うということは当然ありますが、それにしても個人の持つ基本的な背景というものを無視してはならないと言っています。特にカナダの場合は、移民として来た第一世代の方達に対しては、この点に十分注意して対応するよう言っています。

その一方で、事務所としてもシステミックな調査を行っています。調査の対象は、社会保証プログラムを受け入れるかどうかという観点からのもので、文書上には何ら差別はありません。ところが、現場を見てみますと、対応した役所の担当官の恣意的な判断に差別の種があるということで、オンブズマン事務所としては再発を防ぐ作業をしました。この様に外国人に対して、表面にはあまり出てこない、目に見えないような差別が歴然としてあるということを明確にして、勧告を出していきました。その多くが関係省庁により、受け入れられ、実施されています。

 

 

 

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