日本では昔から、「男は仕事、女は家庭」という風習がありましたが、最近は女性も仕事を持つ人が増えてきています。しかし、私の街では依然として女は家庭という風習が残っています。同じ試験を受けて採用されましても、いつのまにか女性は男性の補助的な仕事しか与えられなくなっています。少しでも意見などをいえば、皆様方から煙たがられます。最近、入ってきた若い人たちは小学校の時から男女共学で差別なく教育を受けているせいか、差別の意識はないようです。しかし、役所の三役をはじめ、上司の男性はまだまだ意識の改革がなされていないと思うので、会議や研修会などではそういう面を指導してほしい」と、これは、相談というより要望です。機会があったら県の方へ伝えてくださいということでした。後日、県の方へ女性委員会の役員で行く機会がありましたので、県の女性生活課長さんにその旨伝えてきました。
日本ではやっと女性の意識が高くなり、能力も認められつつありますが、カナダの現状はどうでしょうか。差別などはありますか。お尋ねしたいと思います。
ジャコビー氏:女性のおかれているいろいろな状況、条件を考えますと、いろいろな要素と繋がっていることが分かります。雇用・失業の問題、また、高齢化の問題もあります。女性の方が平均的に寿命が長いということで、最後に残るのが女性であり、孤独感・孤立感を感じてしまう立場に置かれるという問題も高齢化の問題として考えなければなりません。そのような問題の解決ということで、私たちはポジティブアクションプログラムと呼んでいるものを導入しています。残念ながらカナダにおいても、やはり、まだ男性の方が女性に勝っているという思いが心のどこかに厳然としてあります。確かにそれらが消える方向には向かっていますが、まだその芽は残っています。
例えば、仕事をしている人の給料という面から見ますと、内容、質的には似た仕事をしていても、男性の方が女性より給料が高い、また、その他の労働条件についても、女性の方が不利であるという現実があります。これは、官も民もそうした傾向がありますが、それに対して私の住んでいるケベック州では、新しい法律を導入して、給与レベルを平等にするということを明示しました。これについては、各方面から非難もかなりありましたが、私自身としては非常に良い法律であると思っています。それまでの差別、偏向を是正する非常に有効な法律であると思うからです。非難の理由にはいろいろありますが、給料を同レベルにするということは、それだけ資金投入が必要であるということですから、財政的な負担が大きくなるというのが、非難の挙がっている理由の一つです。
世界全体で見ますと、カナダは女性のことに関しては進歩的かも知れませんが、やはり、今、言ったような問題が未だあります。最終的には、社会の空気、文化を変えていくことが必要です。カナダで女性の地位について言われ始めたのは、つい15年程前からです。約30年前には、離婚に関する次のような法律がありました。これは、「男性が離婚をする時は、自分の妻である女性が、浮気をしていることが証明出来れば、離婚が成立する。しかし、女性が離婚する時は、自分の夫である男性が愛人と同居していることが証明出来なければ、離婚は勝ち取れない。」というものでした。もちろん現在はそうではありませんが、二世代を超えていろいろな変遷を遂げ、変化が起きてきてはいるものの、未だ問題が完全にないとはいえません。