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堀江審議官:長期介護施設における入所者、特に女性に対する虐待の具体的なケースをご紹介いただけないでしょうか?

 

ジャコビー氏:まず、カナダの長期介護施設の入所者というのは断然女性が多いです。男性より女性の方が寿命が長いという現実を反映して数的にも多くなっております。女性専用というのも全体の6割強あるくらいです。そこに入っている人たちに対する虐待、これはいろいろなケースがあると思うのです。

一つは、施設そのものの資金不足が最終的に虐待につながるというものであります。ある事例で見ますと、その施設は十分なスタッフを雇える資金がないために、入浴を週に1度しか行えないということがあります。これは、人間の尊厳というところから見ますと、非常に大きな問題であると捉えることができます。男性もそうでしょうが、女性は特に身椅麗にしておきたいという意向が強いと思いますので、満足に入浴ができないということは非常につらいことであるし、人間として一段下に置かれたような、市民として一段下に扱われたような形になっているようです。ですから、これも虐待のひとつの形としてみなされます。

二つ目は、施設の職員が十分に各人のニーズに見合った対応をしていない、また、しようともしていないという姿勢、態度の問題です。非常に紋切型の対応をしている。これも虐待の一つの形です。

もう一つが、そのような施設に入っている人たちの家族です。経済的な理由、いろいろな理由で自宅で面倒が見れないということで、そのような施設に入れているということがあるでしょうけれども、入っている人の子供や孫が「車買いたいからお金を貸してくれ」などというわけです。「銀行から借りるのがいやだから、お金貸してくれ」こういうことをやはり身近な人、身内からいわれますと、嫌とはいえない。だからお金を出してしまう。これは、一概によいの悪いのとはいえない微妙な問題ではあるのですけれど、やはり嫌とはいえないから出してしまうという現実があるのでしょう。それが段々と心の中の不安、心の枷をつくっていくことに繋がるのです。ですから、これも虐待のひとつの形、心理的なものと捉えています。そのことを家族に気付かせるような形での介入をオンブズマンが行っていくということです。

 

浅井局長:どうも有り難うございました。次は行政相談事案の受付、処理の方法などについて、3人の委員からお話をいただきたいと思います。まず、江崎委員からお願い致します。

 

江崎委員:江崎と申します。私は、女性の行政相談委員だけで、作っております「女性委員会」の会計を担当しております。先程の丸山委員(女性委員会の会長)のお話に関連しての相談事案なんですが、女性委員会では、女性総合センター「あすばる」で、毎週第1と第3土曜日の午前11時から午後3時まで、相談の受付をしております。そこにこられた一人の女性から、「男女雇用機会均等法が制定されて幾分かは女性でも役職に就く人が多くなってきましたが、福岡市近郊の私の街では、まだまだ3人くらいしか役職に就いていません。

 

 

 

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