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山本氏

私自身、行政訴訟を担当致しましたのは2件ございますが、両方とも違法支出に伴う返還請求、首長に対するものでございますので、個人の権利救済ということでは担当したことはございません。ただ、個人の権利救済という問題のほかに首長に対する返還請求、損害賠償請求などは、いわゆるある意味での政治的意見の表明とか、あるいはそういう制度の改革とかいう問題を含むもので、このような問題は行政不服審査という中からはどうしてもこぼれてしまうのかな、ここで受け止められるところがないのかな、と思います。また、現在の日本の行政苦情救済制度や公的オンブズマン制度は、確かに一つ一つのクレームを解消する制度として必要だと思うのですが、恐らく今日本で足りないとすれば、こういった政策改善あるいは制度改善を直接受け止める制度がないと思います。つまり、もっと法律的にいえば、法令の中で請求する人間がその当該事象に対して利害関係を有するものと限定するかどうかです。申立権をもっと広く捉えて、政策的なこと、あるいは制度的なことにまで何らかの改善を求めるような提言のできる機能が欲しい、そういう制度が日本にはこぼれ落ちているのではないかと思います。これは、一つには議会がこういう機能を果たさなくなってしまったことが日本の不幸だと思うのです。しかしそうであってもやはり、何か制度を用意して、どこかでこういう声を掬い上げるべきだ、ということを首長などの個人賠償の訴訟を担当していて痛感致しました。

若干お答えがずれましたが、そのように感じております。

 

(司会)

それでは、西日本新聞社の馬場さんに対してでございます。

「マスコミの立場からすれば、紙面で読者を引き付ける出来事を取り上げるのは当然であり、引き付け易い出来事の一つとして、役所のミスが格好の題材となる。しかも、次から次へと曝露されると、マスコミの取材努力に対する喝采がある。しかし、たとえると、水漏れを直すことも大事だが、根本的にパイプを取り替えなければ解決しないという、制度疲労の問題も横たわっている。最近の紙面の論調をみると、これらの指摘・報道が欠けているのではないか。これらの解決のために、どのような努力をされているのか、読者にはこれが見えてこない。行政苦情救済を担当する機関に対する取材結果も併せて知りたい。」

ということです。

 

 

 

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