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これは、所得の低い方々にとっては大変有難いシステム、サービスだと思うのですが、それが仮に料金を取られることになるとしますと、月々に数千円の負担になってくるわけです。こんな時にオンブズマンという方がいらっしゃれば−つまりオンブズマンは、「道理」の分かる人だと思いますので−料金を取らないことは、確かに違法であるかもしれないけれど、この道理に基づいて考えれば、介護福祉タクシーについては例外的な扱いをしてもよいのではないかという判断が下されるのではないか、また、そのようにしていくことがこれからの行政にはとりわけ必要になってくるのではないだろうかと考える次第です。

(注) このことについて、平成13年1月5日付の新聞は「『介護タクシー』について、タクシー会社に運賃を取るよう指導していた運輸省は4日、現状の無料運行を容認することを決め、各地方運輸局に通知した。」旨を報じております。

もう一つは最近、長崎原爆訴訟、それと京都訴訟に相次いで判決が出ました。国の処分を却下して認定しなさいという判決を下したわけでございます。これなども制度の運用に目を光らせる独立性の強い第三者の方々−オンブズマンの方の意見を反映させて行政のあるべき本来の姿にもっていくというふうなことがこれからますます重要になっていくのではないか、と思います。

21世紀の行政改革、政策評価制度、情報公開制度等々がスタートいたします。これまでの事前規制の社会から公正なルールに基づいてチェックしていく事後規制−そういうシステムに社会が変わっていくわけです。そういう中でやはり民主主義とそれぞれの人々の人権を守るという視点に立つ時にオンブズマンが果たす役割というのは大変重要になっていくだろう、というふうに考えています。

もちろん現行の苦情救済制度そのものも大変身近な存在でございますし、地方自治体もそれぞれ相談窓口を持っているわけです。それなりに大変効果を挙げてきたのも事実ですし、そうしたシステムとオンブズマン制度というのを組み合わせていく、重層的なシステムを組み上げていくということが問題解決に大変役立っていくのではないだろうかと考えております。以上でございます。

 

(司会)

法と現実の狭間で、オンブズマンのような人が道理という常識に基づいて解決するのがかえっていい場合があるというお話しでございました。

新聞社というお立場からご発言いただきましたが、資料を見ていただきますと、「全国の行政苦情救済推進会議の設置状況」というのがあります。総務庁本庁に置かれている推進会議の構成員を見ますと、この中にNHKとか、あるいは中日新聞の方が入っておられますが、こういう方々から只今お話のあった道理−常に道理というわけではございませんが−に叶ったご意見をお聞きしながら事案を処理する、ということが現実に行われているということが言えるのではないかと思います。

 

それでは以上で前半のパネラーのご発言は終わりましたので、これから10分間の休憩に入りたいと思います。

 

 

 

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