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さらに、私ども行政相談委員は、先程申し上げましたような行政相談の業務を遂行する過程で得られました、行政運営の改善に関する意見を、総務庁長官に対して述べることができることになっております。これは、行政相談委員法に規定されておりまして、行政相談委員にとりましては、大変重要かつ責任の重い役割でございます。私ども行政相談委員は、総務庁において、長官に提出した改善意見が採用され、また、自ら受け付けた苦情事案を端緒にして行政監察が実施され、あるいは行政苦情救済推進会議の議を経て制度改正等に結びつくことを願って日々活動しているのでございます。

 

さて、ここで私は、行政相談委員と致しまして、記憶に残る処理事案の一つをご紹介させていただきたいと思います。

それは、ブラジルから出稼ぎで来日し、関東地区の某市の町工場で働いていたことのある人(ブラジル三世の方)から申し出られた事案であります。その人は、北九州市に参りまして、外国人登録も済ませ、小さな企業で働いており、1か月10万円程度の収入がありました。ところが、突然以前の居住地から国民健康保険税、市・県民税合わせて17万円の納付請求があり、その対応に苦慮しているという相談でございました。

私は、彼が以前住んでいた所の行政相談委員の方に連絡し、その方に彼の旧住所地の関係機関といろいろ折衝していただきました。その結果、税額を5万円にまで減額する措置がとられたのであります。申出人や申出人の親戚の方で北九州市在住の方々から大変感謝されました。

総務庁の行政相談の特色の一つとして、「全国ネットワークを活用しての相談の受付・処理」ということがありますが、正に、この事案は、行政相談委員のネットワークを活用した結果、うまく解決した事案でありました。

 

次に、先程、堀江審議官がお話の中で行政苦情救済推進会議のことに触れておられましたが、これは、中央のほかに全部の管区行政監察局と一部の行政監察事務所においても、それぞれの地域におきまして、重要な事案について民間有識者の意見を聞いて処理するということで置かれております。九州管区行政監察局にもこれが置かれており、本日のパネルディスカッションの司会をしていただいております川上先生が座長を務めておられ、私も実はメンバーの一人でございます。

私は、行政相談委員の一人として地域の方々からの相談を受け、処理をする仕事をさせていただいておりますが、同時に、九州管区行政監察局管内の行政相談委員の団体の会長をお引き受けしております関係で、行政相談委員の代表という形で九州管区の行政苦情救済推進会議のメンバーということになっております。そこで、最近この推進会議に付議されました事案を2件ご紹介させていただきます。

一つは、「選挙管理委員会は市外転出者が現住所地でも不在者投票ができることを投票案内等で明示するとともに、不在者投票手続を簡便な方法にして欲しい」という事案、もう一つは、「郵便局の公共料金自動払込利用申込書(いわゆるワンライティング方式)への住所氏名の記載及び押印を一回でよいこととするように改善して欲しい」という事案でございます。九州管区行政監察局では、それぞれ同推進会議の意見を踏まえて関係機関にあっせんしましたが、関係機関におかれましては、これを重く受け止めていただき、現在ご検討いただいていると承っております。

 

 

 

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