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今日は主催者の方から、時間が大変きびしいので気をつけてくださいと、いわれておりましたが、やはり、通訳者を介してですので、時間がおしてしまっています。残念ながらオンブズマンの資質として挙げました二つ目の「近づきやすさ」と、三つ目の「独立性」につきましては、今日は割愛させていただき、まとめに入ります。申し訳ございません。

(注)

 

III オンブズマンであるということ

 

日本であれ、カナダであれ、世界どこであってもオンブズマンであるということは難しいことです。

先程も申し上げましたように、オンブズマンというのは、驚くべき現象として捉えることが出来ますし、また、ある意味では非常に特殊な現象ということも出来ます。

オンブズマンの特殊性がどこにあるかといいますと、国民からの苦情を処理する場合の方法にあると思います。オンブズマン又はオンブズマン制度というのは、非常に動きの良い柔軟性のある手を持っていると表現出来るかと思います。もちろん、オンブズマンの腕は、法の持つ長い腕(「法の威力が広範囲に及ぶ」という意味)に比べればだいぶ短いものではありますが、オンブズマンの持つ手は、5本の指以上の働きをすることが出来ます。

このような手を持つことによって、有効性を重視して活動していく、オンブズマン又はオンブズマン制度というのは、その手を自由自在に使いこなせて、ジャグリングでも出来るくらいの自在性を持ったものとなります。さらに、これをいろいろな調査、勧告についての道具として駆使することによって、自分の持つ指を増やしていくことも出来ます。オンブズマンの力、熟練性が上がれば、上がるほど、この指の数が増えていきます。数が増えれば、対応できる範囲が広がっていきます。これが繰り返されていきます。

オンブズマンのスムーズで柔軟性のある指、手を身につけていく、勝ち取っていくのに必要なものが、今日お話した三つの要素、プロアクティヴであるということ、近付きやすいこと、独立性を持っているということです。それこそが、オンブズマン制度の有効性というものの焦点となるべきものです。

それでは、このような手は、一体何に対して差し伸べられているのでしょうか?

一つ目は、国民から寄せられるいろいろな苦情や問題について、公的機関にしっかりと認識させることです。二つ目が、それに対する解決策を出していくことです。オンブズマン制度というのは、基本的には、紛争の救済を行う仕組みの一つです。ですから、オンブズマンは、犯人探しというような姿勢ではなく、問題解決という姿勢をしっかり持っておく必要があります。

プロアクティヴであること、近付きやすいこと、独立性を持っていること、このようなものをしっかり身に付けたオンブズマンは、受け入れられ得る、又は実行し得る解決策、そして、起きてしまった間違いを、クリエイティブな形で解決する方策、そして、最終的には公共サービスの質の向上を図る方法を見つけ出すとに心血を注ぐのです。このことが即ち、公的機関の有効性を向上させる、ということになるのです。

有難うございました。

(注) 講演の中で省略された部分を、講演原稿から抜粋し、ここに掲載させていただきます。

 

 

 

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