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そこで私は、ケベック州のオンブズマンとして彼になりかわり、関係省庁の長と直に話し合いを持ちました。もちろん、関係省庁がいうとおり、このゲーム法では、足を切断して失っていない限り補償の対象にならないというのは確かに正論です。しかし、この法律が作られた当時、今回のように麻痺をして職を失ってしまうということが考えられなかったとしたら、立法者はそれを考慮して法律を作ったとは思えない、という論点から攻めていきました。最終的には政府から補償金を引き出すことに成功しました。

 

(公的機関の説明責任を支援する)

プロアクティヴという側面からもう一つ、それは、公的機関の説明責任を尊重するという立場です。

オンブズマンは、公的機関の持つ意味、その役割の重要性というものを十分認識しています。オンブズマンの目的は、自分が処理をする苦情の数を増やすことではありません。いろいろな問題について、最も良い解決法を見つけていくことです。ですから、国民、市民からの苦情が、関係する行政の仕組みの中で解決できるものであれば、そこを最優先に紹介する、そこに行くように勧めるという形をとります。つまり、先ず、市民が持っている問題に関係する機関に申し立てを行うように促します。もちろん、個人的な理由、例えば、精神的、知的な障害ゆえに自分ではそのようなことが出来ないという場合には、オンブズマンが支援をします。

 

(勧告の実行を監視する)

プロアクティヴであるというもう一つの資質、それは、オンブズマンが行った勧告が、その後、どのようにされたかをしっかりと見ていくということです。勧告が、受け入れられ、また、実施されたとしても、それが実際に、どのような効果を及ぼしているかについて、関係している国民、市民自身からの確認を貰うという作業をします。

 

(法案に関する報告)

プロアクティヴなオンブズマンの資質のもう一つは、ある法案が採択されたり、実施されたりするのを待たないということです。オンブズマンは、いろいろな官僚、公務員の仕事の仕方であるとか、慣行について非常に広範な知識、経験を持っていますので、ある法案が提案された時、それがどのような影響力を将来もってくるかということを察知することが出来ます。悪い影響力も含めてです。ですから、法案審議の過程の中で、法案に改善の余地があればそれを促していくという作業をします。ただ、法律の根幹的なところにはオンブズマンは立ち入りません。それが、実施された時にどうなるかという観点のみから介入をしていきます。また、このような法案を作っていく場合、特に問題を予防するという観点から見ますと、明確なパラメーターであるとか、基準が必要になってきますので、行政側、議会側が恣意的な決定をしないように、いろいろな提言をしていきます。そうすることによって、問題を未然に防ぐということに繋げていくことが出来るからです。

 

 

 

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