その具体的な方法としては、オンブズマン自身が発行し、公的機関に配る一般手引書の中に、この基準を加えるということも一つの方法です。
具体的な例として、93年〜94年版の年次報告書の中で、公的機関が公衆との関係を改善し、独断的な意思決定を避けるため、公的機関が遵守すべき幾つかの規則(56)を規定した「Social Pact」(社会契約)を作成し、発行しました。
56項目の規則の内訳は、次のとおりです。
・公開性に関するもの (7項目)
・アクセスに関するもの (7項目)
・法律の遵守に関するもの (7項目)
・自然的正義に関するもの (5項目)
・市民に焦点を当てた計画に関するもの (4項目)
・期待に見合った形でのサービスの向上に関するもの (5項目)
・市民の尊厳に関するもの (8項目)
・より責任ある公的機関に関するもの (13項目)
私は、こうしたものを著しましたが、その内容について公的機関に十分認識してもらうために、いろいろな機会を捉まえて活動をしています。方法としては、私が出します年次報告書、その他のいろいろな特別報告書というのも大きな媒体です。
(例外事例においても公平を維持)
オンブズマンが勧告をする場合、それが十分に公平な視点から為されるものであることを確認することが大切です。これは文言の上だけではなく、精神の上からも公平性ということが映し出されていなければなりません。
いろいろな法律があります。立法者がそれを作った時に意図したもの、求めたものとは違ったような結果を出す場合もあります。人々に対して害になるような、又は非常に例外的な結果をもたらすものもありますが、そのあたりもしっかりと認識しなければならないので、かなり細心の注意を要する作業になってきます。
公平という観点から一つご紹介したいケースがあります。これは、既に決着したものですが、ハンター(狩をする人)に関わるケースです。
ある人が狩猟の許可を得ました。カナダではそのような許可を得ると、自動的に狩猟中の事故に対する保険に加入させられることになっております。これは、民間の保険の場合と同様に、もし、事故に遭遇し、結果として身体の一部を失うようなことになった場合には保険金が支払われるという制度です。
この具体的なケースですが、ある男性が狩をしている時に事故に遭いました。牛乳配達の仕事をしている人です。一緒に行った友人が誤ってこの男性の足を撃ってしまったという事故でした。足を切断する必要はなかったのですが、何度も手術を繰り返したにも関わらず、遂に麻痺してしまいました。怪我をした牛乳配達人は相手を訴えようとはしませんでした。そのような経済力がないことを知っていたからです。しかし、彼自身も仕事には戻ることが出来ません。この男性に残された唯一の手段は、関係省庁に対し、保険金の請求をすることでした。これは、ゲーム法という法律に則って手続きをとることが出来ます。しかし、関係省庁の言い分は、「足は麻痺しているだけで切断されていない。したがって、この法律の定めるところに合致しない」ということでした。