そのうちの一つですが、これは、麻薬などの取引を減少させるという観点から、州の公安大臣や関係当局に対して勧告をいたしました。その内容の一つは、まず、主犯グループと見做される被収容者達を物理的に隔離できるような建物に改造するということです。こうすることによって、未だ常習犯ではない者へのこの主犯グループからの影響力を弱めることができると考えたからです。
このように非常に包括的な介入を行ったわけですが、その後10数か月にわたり検討がなされました。その結果は、非常に前向きなものでした。公安大臣は、直ちにオンブズマンの勧告に基づいて行動計画を策定し、昨年、99年の時点で私が勧告したうちの75%が既に実施に移されています。
(実際的な勧告)
オンブズマンの出す勧告は、関係機関に受け入れられ、そして実施に移されるということが最も望ましいわけです。そのように考えますと、先程からご紹介しております、プロアクティヴ(創造力豊かで主導権を取れる積極性がある)なオンブズマンであるからにはその勧告は、具体的、かつ、実際的なものを出していける力が必要です。陳腐な決まり文句を並べ立てたり、口先だけの文言を並べ立てるのではいけません。また、出した勧告の内容があまりにも一般的過ぎて、どのようにも解釈ができるというようなものも有効ではありません。ですから、ここでのキーワードは明瞭、簡潔、的確な勧告をしていくということです。そうすることによって、公的機関に対し、オンブズマンが何を求めているのかが即座に理解できるものになるのです。
一つの例を申し上げますと、ケベック州のオンブズマンとして政府、また、行政官に対し、これまで色々行ってきた活動のよかったところ、また悪かったところをきちんと検証し、次の計画策定に活かすように、という提言をいたしました。これは、非常に一般的、全般的な勧告ですので、これを補完するため、具体的な事項として、政府が改革の採択をしたり、実施に移す際に生ずる不正であるとか不当な運営を防止するために各省庁を巻き込んだ委員会を作ることを勧告しました。
さらに、新しい改革プロジェクトを導入するに当たって、それが引き起こすかもしれない色々な問題、不公平などのリスクを最小限に抑えるために、まず、この委員会が具体的に分析をし、その内容を関係省庁や機関の長、政府に説明することができるようにすることを提言しました。最後に、オンブズマンとしてもう一つ勧告したことは、この委員会が、そのプロセスにおいてオンブズマンと協議の場を持っようにということです。
(介入基準を公にする)
次に、プロアクティヴなオンブズマンの目的は、最終的には対立、揉め事を解決するということにありますので、そのことを、オンブズマンは公的機関に認識させなければなりません。このため、オンブズマンは、その介入基準、即ち、オンブズマンがどのような基準に基づいて、政府の行政行為を判断しているかを公的機関に知ってもらう必要があるのです。