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私が提出した勧告の一つは、州の保健・社会サービス担当大臣に対し、高齢者が入居する住宅の所有者に営業の許可を取得させるようにということ、二つ目は、介護施設に関しては、不平委員会(苦情処理委員会)とケベック州オンブズマンに対し、年次レポートを出すようにということ、三つ目は、その人権委員会自体が高齢者虐待、また、高齢者搾取の対象となっている人を支援するための何らかのアプローチを行うように、ということでした。また、これには、虐待を受けている人の家族がどのような対応をすればいいのかということについても、指導していくようにということも含めています。

 

(自己占有権)

プロアクティヴ(創造力豊かで主導権を取れる積極性がある)なオンブズマンの資質の二番目は、自己占有権を持っているということです。これは、どういうことかといいますと、オンブズマンが、自身の判断で介入するかどうかを決定する権限を、持っているということです。ケベック州のオンブズマン関係法の中では、このことがきちんと明記されています。

ですから、オンブズマンは、ただ単に苦情が来るのを待っている、不平があがってくるのを待っている、という立場ではないということです。

 

(是正及び予防の勧告)

イニシアティヴを取るべき時期を知っているプロアクティヴなオンブズマンは、有害な状況と見做した場合に、事後に是正措置を勧告するだけでなく、有害な状況の発生が懸念される場合は、事前の予防措置を提言することもあるのです。オンブズマンの役割は、事後の是正と事前の予防の両方あるのです。

オンブズマンのよって立つべき点は、まず基本的人権ということです。そして、それに鑑みて更生施設でのサービスが、どのように提供されているか、それについて過ちがあれば正していく、また、未然に防げるものがあればその措置を提案していくということです。

このような活動を通して、行政サービスの透明性というものを高めることにもまた一役買うわけです。私は、99年の1月にこの観点から更生サービスについての是正措置を勧告しています。

この99年の1月に出しました勧告は、刑務所などの矯正施設の運営に関するものです。州の刑務所がありますが、そこでの状況は、当時、非常に危機的なものでありました。そこは麻薬などのやりとりの温床になっていましたし、人権の侵害はもう日常茶飯事のように行われていました。このため、被収容者からの苦情が、4年間(94年から98年)で93%も増加したという現実がありましたし、より大きな施設では、この増加率が156%にも上りました。このため、オンブズマンが「特別報告書」という形で、53の勧告をしたのです。これは、このような施設における人権の侵害、また、不正な管理、誤った行為などを是正し、あるいは未然に防止することを目的にしたものです。

 

 

 

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