C-2 有効性を重視するオンブズマンの特性
この30年間の経験から、いくつかの結論を引き出すことができます。ここ数年、私は個人的にそのような結論を数え上げ、一つにまとめ、それらに、名称を付ける作業を始めました。それらを、私は、「有効性を重視するオンブズマンの特性」と呼んでいます。
有効性重視という観点から見ますと、オンブズマン、あるいは日本の場合のように、「オンブズマン的な制度」において、まず、重視されなければいけないことは、有効であるかということです。そして、もし完全にそうでないとしても少なくともオンブズマン、また、そのような立場にある人は、それを求めていかなければなりません。
ここでいう有効性を達成するためには、いくつかの要件を満たさなければなりません。それは、三つあります。
一つ目が、プロアクティヴ(創造力豊かで主導権を取れる積極性)
二つ目が、アクセシブル(利用し易さ、近付き易さ)
三つ目が、インデペンデント(独立性)
もちろん、オンブズマンが、すぐにこの三つをすべて満たすということは無理でしょうが、少なくとも、オンブズマン制度全体としてこれを目的として進んでいくということが必要です。
C-2-a プロアクティヴであることについて
(体系的アプローチ)
有効性重視のオンブズマンの最初の資質である「プロアクティヴ」(創造力豊かで主導権を取れる積極性)ということですが、これについては、まず、主導権を取るべきときを知らなければいけないので、体系的な介入という形をとれることが必要です。寄せられる個々の苦情を一つの踏み台あるいはホームベースの様に使って、そこから公的機関の全体像を把握するという作業が必要になってきます。
このように、全体像を把握することによって受け取った苦情についての、より明快な判断をすることが可能になります。そして、さらに、全体像を把握しているということで、オンブズマンの出す是正措置も全体的なアプローチが活かされた、具現化されたものとなってくるという可能性があるわけです。
ケベック州のオンブズマン事務所に最近寄せられた、苦情の実例を一つご紹介します。これは、高齢者の虐待についてだったのですが、今年(2000年)の2月、人権委員会が高齢者の虐待についての公開フォーラムを行いました。その際、私もオンブズマンとしてこれまで培ってきた保健・社会サービスの分野の政府機関と市民との関係についての専門知識を活かしまして、23に及ぶ勧告を含む報告書を人権委員会に提出しました。
オンブズマンとして、この件に関し、繰り返し起きる問題の真相を把握することができる、という能力を持っていましたので、ケベック州のオンブズマンとして高齢者の虐待に関し、何が主要因となっているかを特定しました。その一つは、虐待と一言で言っても色々な形がありますが、それを高齢者が気づいていないということ、もう一つは、長期の介護施設のネットワークに対する予算の削減という問題、三つ目が、この分野での苦情を処理するプロセスが不完全、不十分であるということ、最後に民間が行っている年金受給者対象の住宅の持つ違法性ということです。