オンブズマンは一体、何を行うのか。まず、国民からあがってきた公的機関に対する苦情に耳を傾けます。そして、自分の専門性をフルに活かして介入すべきかどうかの決定を下します。介入する場合には、再びその専門性を十分に活かして公的機関に対する是正を提言していきます。
このように、オンブズマンの何たるか、そして何をするのかということを考えてみますと、一つの「仕事」に集約することができます。オンブズマンは、公的機関に対して国民が持っている苦情を処理する、対応するという仕事です。これは、いかにもシンプルですが、中身はそうではありません。処理する、対応すると簡単に言いますが、これは、実際に聞こえる以上の、目に見える以上のものがあります。
C 苦情処理の方法:ケベック州オンブズマンの経験
オンブズマンにとって、苦情を処理するということは、次のことを意味します。
一つには、国民からあがってきた苦情・要望に耳を傾ける。
二つ目が、その内容が、オンブズマンの管轄範囲内であるかどうかを見極める。そして範囲外であれば、その人に、どこへ行けば対応してもらえるのかを指示する。情報を提供する。
三つ目が、もし、内容がオンブズマンの管轄範囲内であれば、その申し立てを分析し、その正当性を分析する。この段階で、もし、必要があれば公的機関からの情報収集も行う。
四つ目が、もし、申し立てが正当であるということであれば介入をする。
五つ目が、公的機関に対し、是正措置を提言する。
六つ目が、公的機関からの答えがイエスであれ、ノーであれ、そのフォローアップをする、後処理をする。
この一連のステップのことを、オンブズマンの処理プロセスと呼ぶこともできますが、このプロセスをどのように進めるかには色々な方法があると思います。そのオンブズマンの所属する国のオンブズマン制度が、それまでどういう道のりをたどってきたかも影響するでしょうし、オンブズマン個人がどのような特性を持たせて処理したいと思っているかにもよるでしょう。
C-1 30年間の実績
ケベック州において、オンブズマンが設置されたのは、1968年のことです。州首相の推薦を受け、州議会によって任命されました。そして、オンブズマンというポジションは行政、司法から独立した存在です。また、議会が任命するとはいえ、立法からも独立した存在です。
総体的に見ますと、ケベック州のオンブズマンの役割は、職権の乱用、不誠実、不公平から生ずる不法行為、過失、そして不十分、また不適切な政府情報、根拠のない不当な遅延、専横、公共サービスヘのアクセスの制限、行政決定における矛盾、そして政府が取り組むプログラム関連の調整不足というような、色々なことから生じてくる不正を是正することです。
1999年から2000年の1年間に、ケベック州オンブズマンに対する苦情の申し立て件数は26,258件ありました。ちなみに、このケベック州の人口は750万人です。