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B 現代オンブズマンの役割とは?

B-1 監視し改善すること

オンブズマンの役割もずっと進化して参りました。そして、そこには二つのオンブズマンの世代ともいうべきものを見て取ることができます。スカンディナビア半島とニュージーランドで導入されたオンブズマンが、第一世代のオンブズマンであり、行政の不作為に関する市民の苦情に対応するものであります。ケベック州のオンブズマンは、本来的には第一世代のオンブズマンです。多くの場合、第一世代のオンブズマンは、人権委員会と併設されており、両者の仕事の境界線は時間が経つにつれて不鮮明になる傾向にあります。

世界に広がった時代のオンブズマンは、第二世代のオンブズマンであります。第二世代のオンブズマンは、行政の不作為に注意を払うのみでなく、人権委員会の役割も果たしております。簡単にいえば、双方の役割を果たしているのであり、更に正確にいえば、双方を融合した役割を果たしているのです。このオンブズマンの典型は、ラテンアメリカ、東欧、中欧に見られます。

オンブズマンの観点からしますと、市民権とは基本的権利であり、国民が日常の生活をする中で行使される権利です。基本的権利は、それが行使される場合は、必ず、あるメッセージを伴っております。それは、国民が社会的な活動をするすべての側面において、人間として尊重されるべき権利を有しているということです。もちろん、この社会的活動の中には、公的機関との関係も含まれております。こういうことを考えますと、オンブズマンというのは、ただ単に、行政決定の合法性を監視するだけではなく、その妥当性と適時性も監視していかなければなりません。

現代のオンブズマン制度は、日々複雑化していく官僚制というものに直面しています。この官僚制の複雑化によりまして、オンブズマンの役割を遂行していく上で、非常に複雑な手順、プロセスというものが必要になってきています。しかし、他方このように官僚制が複雑化していけばいくほど、オンブズマン側の専門性に磨きがかかるという側面もあります。ですから、このように複雑化していくことは、オンブズマンの有効性というものを更に推し進めることもできるし、その力を削ぐこともできるという両面を持っています。

 

B-2 オンブズマンとは何なのか、実際に何をするのか

オンブズマンの役割の範囲を明確にするために、オンブズマンという言葉の定義と、また、オンブズマンが実際に何をするのかということについて、考察する必要があります。実際には、この二つを組み合わせて初めてオンブズマンの何たるかの全体像が見えてくるといえます。

オンブズマンという言葉は、スウェーデン語です。そして、その意味するところは他の者の代弁者という意味です。これは、まさに皆様今日お見えになっている行政相談委員の方達が担っていらっしゃる役割でもあります。そして、この「オンブズマン」という言葉こそがその役割の何たるかを表しています。オンブズマンは、まず、公的機関を監視し、過ちがあれば是正措置、また予防措置を勧告します。つまり、オンブズマンは、国民から苦情の申し出があった場合に、国民の代わりになって、関係機関に対し、声をあげる立場にあるわけです。そして、そのような形でオンブズマンが声にしていかなければ、決して国民の声は行政に届かない、ということになるでしょう。

 

 

 

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