今年の4月、総務庁行政監察局の塚本局長及び全国行政相談委員連合協議会の鎌田会長のお二人から、福岡フォーラムに出席し、講演をしてくれないか、という打診を受けました。そして、その後正式なご招待を受けまして本日、このような会議に出席できましたことを、大変嬉しく思っております。
日本でこのようなフォーラムが開かれますことは、世界中のオンブズマンにとっても非常に意味深いことでございます。オンブズマンの立場にある者は、孤独の中で仕事をしなければならないという場合が多々あります。したがって、日本においてオンブズマンの役割を果たしていらっしゃる方々が、このように一堂に会し、交流を図られるということは非常に心強いものがあります。
本日は、まずオンブズマンの役割について、そしてオンブズマン制度のもつ有効性と独立性という観点からお話を進めて参りたいと思います。
I オンブズマンの定義について
A 番犬から協力者まで
オンブズマン制度というのはある一つの驚くべき現象であるということができます。その発展と成長を見ますと予想通りに動いた部分もあれば、予想だにしなかった方向に発展した面もあります。
オンブズマンは、政府の行政行為についての国民からの苦情の処理をいたします。このオンブズマン制度は、その存在そのものが、国民こそが権利を持っていて、その権利は、政府・公的機関のすべての人たちから尊重されるべきである、という事実を映し出しております。
民主主義の仕組みの中で、オンブズマンは、公的機関の活動に対する国民の苦情、不平というものを外部から判断するために作られた制度です。オンブズマンは、国民からの苦情を処理するに当たって、常に次のような問いかけを自らにします。それは、問題となっている何らかの行政決定によって、国民が非民主主義的な形で不当な扱いを受けているのかどうかという問いかけです。
そして、この問いかけこそが、オンブズマンの民主主義についての定義の基礎を成すものです。すなわち、オンブズマンが定義する民主体制の下で、基本的権利は、官・民を問わず、すべての社会活動の中で尊重さるものであり、そのような権利の尊重は、立法上の認識や、オンブズマンなどの独立した制度の有効性の中で、更には公的機関の説明責任などにより、しっかりと保証されていなければなりません。