しかしながら、政府公共部門の改革理念としてのNPMについては、政権政党の交代に関わりなく、国民は広くその価値を支持しているようである。しかしながら、NPMを追求すればするほど、「公共利益」とは何であり、だれがそれに責任をもつのかという根本的な命題と向き合うことになる。センターリンクは確かに斬新な動きといえるが、本当に市民にとって役立つ「ワンストップ・ショップ」になりうるのであろうか。とくに福祉改革の関連において、サービス提供の効率性と社会的弱者への対応という問題をどのように調和させていくのか、今後の動向が注目されるところである。
(小池治)
<注>
1) 本章ではオーストラリアの行政改革についてはその概略を記すにとどめる。オーストラリアの行政及び管理改善については、総務庁長官官房企画課『オーストラリアの行政』(平成12年10月)に最新の情報が収録されている。なお、1960年代以降のオーストラリアにおける行政改革の展開については別稿でやや詳しく論じたので参照されたい。小池治「オーストラリアにおける行政改革の政治過程」『横浜国際経済法学』第9巻第3号、2001年3月。
2) Ferlie, Ewan. et. al. The New Public Managemnet in Action. Oxford University Press, 1996.
3) Osamu Koike, "New Public Management in Japan and Southeast Asia: A Magic Sword for Governance Reform?" Paper presented at the IIAS/Japan Joint Panel on Public Administration, Bologna, Italy, 21, June 2000.
4) Judy Johnston, "The New Public Management in Australia," Administrative Theory and Praxis, Vol.22, No.2, 2000, pp.345-368; Jeremy Moon, "The Australian Public Sector and New Governance," Australian Journal of Public Administration, Vol.58, No.2, June 1999, pp.113-120.
5) John Halligan and John Power, Political Management in the 1990s, Oxford University Press, 1992. なお、その後FMlPは政府のすべての機関で導入されたが、ジョンストンは理念と実際の効果の間にはギャップがあったと指摘している。Johnston, "The New Public Management in Australia," p.351.
6) 1980年代の行政改革については、次の文献が最も詳しく整理している。Management Advisory Board, The Australian Public Service Reformed, Australian Government Publishing Service, 1992.