(出典) Centrelink, Annual Report 1998-1999, Commonwealth of Australia, 1999, pp.14-15より作成。
オーストラリアの戦略的協働アプローチは、1990年代半ばから、当時の社会保障省が中心となって開発してきたものであり、他のOECD諸国と同様に、NPMの展開という環境の中で作り上げられたものである。すなわち、アウトプット志向、政策助言の競争性、政策助言とサービス提供の分離、パフォーマンス(VFMと政策目標達成)、パフォーマンス報告、政策・プロダクト・サービスの品質確保、手続志向よりもリスク管理志向、公共部門における市場創造、契約関係、経営責任者の統制強化、コーポレイト・ガバナンスの強化といった環境の下で、purchaserである社会保障省がproviderのエージェンシー(センターリンク)と密接な相互補完関係を持ちつつ、providerの側も明確に定められたリスク管理枠組みの中で運営できるような仕組みとして、この戦略的協働の仕組みが考案されたのである20)。
戦略的協働は、purchaserとproviderのあいだの協定書(agreement)のなかに規定されている。協定書には1)協定の目的、2)戦略的協働の原則、3)省とエージェンシーの関係、4)エージェンシーへの権限移譲、5)協定の下で提供するサービス、6)財政、7)パフォーマンスの監視、8)データ・アクセス、9)コンサルテーション、10)係争、等が定められているが、いずれも基本原則を定めたものであり、具体的ないし詳細な部分については、purchaserである省とproviderであるセンターリンクのあいだで、インフォーマルな交渉を通じて作成される。