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こうしたハワード連立政権の行政改革の中で、とりわけ他の先進国からも注目されているのが、本章で取り上げる「連邦サービス提供庁(Commonwealth Services Delivery Agency)」―通称「センターリンク(Centrelink)―」である。センターリンクは、連邦行政部門からサービス提供部門を独立させ、民間経営の手法を取り入れるとともに、自律的な組織運営を通じて政府サービスの「ワンストップ・ショップ」化を目指すものであり、従来にない新しいタイプの公共サービス・プロバイダーとして、その成り行きが注目されている16)

 

2. センターリンクの設立

センターリンクは、1997年連邦サービス提供庁設置法により「応答的で質の高い政府サービスと機会をもたらし、VFM(Value For Money)を高め、オーストラリアを際だたせる」ことを目的に設置された機関である。当時、ハワード首相は「サービス提供部門において過去50年間で最大の改革」と述べたが、まさしくそれはセンターリンクがハワード行政改革のシンボル的な事業であることを意味している17)

 

表1 センターリンクの特徴

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(出典) Sue Vardon, "Centrelink: A Three Stage Evolution," in Gwynneth Singleton, ed., The Howard Government: Australian Commonwealth Administration 1996-2000, UNSW Press, 2000, p.97.を修正して作成。

 

センターリンクは当初、旧社会保障省(現在の家庭コミュニティサービス省)の年金業務や雇用教育訓練青年省の失業給付などの公共サービス業務を総合的に提供する独立機関として設置された18)。その後、センターリンクと事業契約を結ぶ省庁の数は増え続け、2000年6月末の時点では、13機関(家庭コミュニティサービス省、雇用職場関係中小企業省、教育訓練青年対策省、運輸広域サービス省、保健高齢者介護省、農水林野省、通信情報技術・芸術省、退役軍人省、外務貿易省、移民多文化省、豪州選挙委員会、タズマニア州政府、各州・準州の住宅局)がセンターリンクと業務契約を結んでいる。

 

 

 

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