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また、公共組織内部においては「結果(results)」を重視するとし、人事管理に関する規制緩和と権限の下位移譲を進めている。そのための立法措置として1996年に制定されたのが「職場関係法(Workplace Relation Act)」である。これは、従来の労使関係(industrial relations)に代えて、雇用側と被雇用側とが「協力的」な職場関係を確立することを求めたもので、各機関ごとに管理者と被雇用者が労働条件等について協定(agreement)を締結するという分権的な仕組みを定めている。政府は1998年までに全公務員の大半がこの協定に移行するとしている11)

2]の「競争と選択の原則」について、ハワード連立政権は、これまで行政が仕事としてきたことでも、それが電話帳(Yellow Page)に同様の仕事が掲載されていれば、サービスについて民間と競争すべきであるという方針を強く打ち出している。その一つの表れが、政府が1997年7月から進めている「サービス憲章(Service Charter)」である。これは顧客のサービスヘの参加を通じて、公共サービスの質の向上を図るもので、イギリスの「市民憲章(Citizen's Charter)」に倣ったものである。また、GBEの民営化もハワード連立内閣のもとでさらに加速度的に推進されており12)、電力事業、保健サービス、畜産、雇用サービスなどの部門でGBEの民営化が進められている13)

3]の「アウトカムの重視」については、新財務管理改善事業と発生主義会計予算システムの導入があげられる。新財務管理改善事業に関しては、1]1997年会計検査法(The Auditor-General Act 1997)、2]1997年財務管理責任法(Financial Management and Accountability Act 1997)、3]1997年連邦機関及び国有会社法(Commonwealth Authorities and Company Act 1997)、という3本の法律が制定され、これにより独立機関を含むすべての政府機関において統一的な財務管理が行われることになった14)

4]の「パフォーマンス・マネジメント」の象徴は、「競争入札契約(Competitive Tendering and Contract: CTC)」の推進である。CTCは、1996年に産業委員会(Industrial Commission)が大蔵大臣補佐の要請を受けて作成した調査報告「公共機関における競争入札契約」がべースとなっている。すでに各州及び地方政府においては様々なかたちでCTCは導入されてきたが、同報告ではCTCのメリットと注意点を示し、すべての公共機関がCTCに積極的に取り組むよう求めている15)

 

 

 

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