だが、最近の経験が鮮やかに示すように、米国においては事情がたいへん異なっている。クリントン政権と共和党が支配する第104議会との激しい政策対立は、歳出法案を遅延させ、そのうちのいくつかをまったくブロックしてしまった。歳出資金に依存するPBOが、予算デッドロック中に直面する問題は明白である。だが、通常の場合でも、歳出法が課した条件は、予算サイクルの初期に合意された目標を達成するPBOの能力を損ないうる。このことは、いったん歳出法案が登録される(enrolled)と、業績契約は修正されなければならないこともありうることを意味している。
NPRは、この困難を予測して、PBO候補は「資金調達可能性」(funding predictability)をもつと主張することで対応した。実際このことは、PBO候補が、利用料金(user fees)を課したり、回転資金(revolving funds)における料金を保持したり、年次歳出の不要な回転資金を引き出したりする組織となることを意味している。現在すべてのPBO候補は、回転資金を通じてみずから資金調達し、回転資金の創設を提案し、料金収入を得て、回転資金を通じて活動資金を得る潜在能力をもっている。それに対して、1995年には、110のネクスト・ステップス・エージェンシーのうち、回転資金を通じて自ら資金調達していたエージェンシーは、わずか12のみであった。
(c) 契約雇用の合憲性
最高裁によって確立された一般ルールは、大統領によって任命された者が、政権からある程度の独立性を必要とする準立法的・準司法的機能を行使するのでない限り、大統領が自ら任命した者を解任する権限を、議会が制限することはできないとしている。
特許・商標局や合衆国造幣局の法案の経験等を経て、NPRは、1997年初頭に、COOは、「業績契約に設定された業績目標を達成する際、不正行為や失敗のために、(1)大統領、または、(2)本省長官によって、解任されうる」という新しい条項を採用した。ただし、「大統領の解任権は、使われることがあるとしてもまれである」とNPRは述べている。だが、この新しい条項は、COOが業績契約に基づいて雇用されるという考えを損なっている。自分たちが間違って解雇されたと信じるCOOは、解雇が大統領名でなされた場合、何らの法的対抗手段もない(no legal recourse)ことになる。
COOの任命を統治する条項に関する困難もある。NPRの当初のプランは、COOが、官民を通じて候補者の「競争的探求を通じて雇用される」べきであるとしていた。だが、1995年の特許・商標局法案は、単に、COOが商務長官によって任命されるとだけ規定していた。こうしたことの結果は、政治的任命がとくに似つかわしいとは思えない「執行活動」(operational)領域での政治的任命の数を拡大することかもしれない36)。