米国においては、一方で、クリントンやゴアによる政府再生のためのリーダーシップと、それを支えるオズボーンやゲーブラーたちのように学界の主流派とはいえないコンサルタントやジャーナリストたちがいるのに対して、他方で、PBOの出現を喜ばしく思わない議会や労働組合や関連業界団体と、彼らを支えることになるロバーツのような学界の主流派に近い学者たちが存在している。そして、PBOに関しては後者の影響力がやや強いように見えることがたいへん興味深い。
(3) ルールの規制緩和は可能なのか―規制緩和を妨げるアクターたち
タルボットたちも示唆していたように、PBOプランにおける主要な2要素のうちの1つは、PBOの執行活動(operation)に対する立法上、規制上の制約を解放してやることである32)。
ゴアは、1996年3月に次のように説明していた。「われわれは、PBOのために、ビジネスするようにビジネスさせていないさまざまな制限ルールを撤廃したいと思う。そうした制限ルールとは、あらゆるレッドテープ、管理者が人びとを有効に使うことを妨げる人事ルール、資源の計画や配分をほとんど不可能にさせる予算制約等だ」。しかしながら、イギリスの経験は、実質的な規制緩和は実現が困難であることを示唆している(このことが、ネクスト・ステップス・エージェンシーの業績が、その擁護者が示唆するより穏やかなものである理由を説明している)。
ネクスト・ステップス・エージェンシーは、執行活動におけるより大きい自由を得ようという自分たちの試みが、すくなくとも3つのやり方で妨害されていることを見出してきた。おそらくもっとも困難な問題は、本省(parent departments)がエージェンシーに対する統制を緩めたくないという問題である。エージェンシーと本省間の紛争を扱う公平な調停者の指名―1991年報告の著者以降、「フレーザーたち」(Fraser figures)として知られる―を政府は奨励し始めたけれども、両者間の紛争は続いている33)。調整官庁(central management agencies)もまた、ネクスト・ステップス・エージェンシーに制約を課した。例えば予算を扱う財務省である。また、中央が課す改革イニシアティヴの継続―質の向上をめざす競争イニシアティヴや市民憲章イニシアティヴ―がエージェンシーの自由を減らし、エージェンシーのトップたちに「明白な幻滅」を惹起させているとの議論もある。さらに、国会(Parliament)もまた、執行エージェンシーを制約する役割を担っている。最近の2つのケース―社会保障児童扶養庁(Social Security Child Support Agency)と刑務所庁(Her Majesty's Prison Service)―では、エージェンシーの不正行為についての国会の不満が、エージェンシートップの解雇という結果につながった。