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年間の効率改善を示したいという強いインセンティブがあることを考えると、計画された数字と報告された削減の数字との現実性を疑うべき根拠がある。しかもこれらの年間統計は、エージェンシー自身によって提供されたデータに基づいている。すべてのネクスト・ステップス・エージェンシーについて年間運営費の実際の変化に基づく統計は、それほどドラマチックな物語を語っていない(表5)。近年、ネクスト・ステップス・エージェンシーのすべての運営費は、大きくはないにしても、一貫して年々増加しているのである。

 

表5 ネクスト・ステップス・エージェンシーの財務パフォーマンス

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(原注)a. その年の運営費節約を報告しているすべての省庁について、その1年間に、実際の運営費が計画された運営費から変化した割合。

b. すべての省庁について前年からの、インフレ調整していない実際の運営費の変化。

c. すべての省庁について前年からの、その年度が始まった年の消費者物価指数を用いてインフレ調整した実際の運営費の変化。1995−1996の数字は、その年のデータを提供しなかった1つの省庁を除く。

(出典) Alasdair Roberts, "Performance-Based Organizations: Assessing the Gore Plan," Public Administration Review, VoL67, No.6, 1997, p.468, Table 2.

 

ゴアは、PBOによって公務員を3分の1まで削減できると述べたが、確かに1979年のサッチャー政権以来、イギリスの公務員は3分の1まで減った。しかし、その削減のほとんどはNSIのためではなく、1980年代に民営化された(privatized)国営企業の職員が減ったためなのである。オズボーンはもっと穏やかに、ネクスト・ステップスがイギリス公務員を15%削減したと主張している。だがこれも不正確だ。イギリスの公務員は1990年までに約15%減ったが、そのほとんどはネクスト・ステップスのためではない。イギリス政府は、この削減の3分の1が質の向上をめざす競争イニシアティヴのもとで進められた外部委託(contracting-out)によることを示唆している。その他のほとんどは、おそらくは軍事削減と継続する民営化による。

節約に関するこうした主張が実体を持ち得ないものだとすると、NSIのインパクトについて一体何がいえるのか。より穏やかだが重要な主張は、労働量は増えたが予算はほとんど凍結された期間中サービスを維持・改善するように、ネクスト・ステップスはエージェンシーに迫った、というものである31)

 

 

 

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