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しかしながら、PBOの潜在的便益についてのこうした主張は現実的なのだろうか。またPBOの擁護者が示唆するほど簡単にPBOは執行されるのだろうか。ロバーツはこの問題を明らかにすることを論文の目的とする。そして結論として、ゴアのプランは、有用な実験であるが、その便益についての広範な主張については注意して扱うべき多くの理由がある、と結論づけている。

またNPRの提案の多くは、連邦政府の硬直性や非効率性についての長期的な関心の現れであるが、これらの実践の多くは、政府機能を縮小・廃止させようとする議会の圧力に対して、連邦政府の行政能力を保持しようというより広い努力の一部分とみなすことができる。このPBOの提案は、行政能力を保持しようとするより広い政治闘争における一戦術として有効かもしれないが、イギリスの先駆者(エージェンシー)のような大きな政治的重要性を持ち得ないため、おそらく戦術的には重要ではないだろう、とロバーツは述べる。また実現したPBOは、その次の段階では民営化されたり廃止されたりする可能性が増大するだろう、とも述べている。

 

(2) ネクスト・ステップス・イニシアティヴ(NSl)がもたらしたものは何だったのか

PBOプランのモデルであるイギリスのイニシアティヴ(1988年イブスレポートに端を発するNSI30))は、20世紀のイギリスにおけるもっとも重要な公務員制度改革として語られている。しかしながら、その改革が、イギリス政府内の業績をどの程度改善したか正確に測定することは困難である。第1に、改革以前における執行エージェンシーの業績データが存在しない。第2に、改革以後における一貫性のある業績データが存在しない。第3に、NSI以後にとられた他の改革イニシアティヴ、たとえば1991年7月と11月にとられた市民憲章イニシアティヴ(Citizens' Charter Initiative)と質の向上をめざす競争イニシアティヴ(Competing for Quality Initiative)の効果が不確実である。

こうした困難はあるが、ネクスト・ステップスのインパクトについての米国でのより広範な主張は支持できないと述べることは、おそらく可能である。PBOの擁護者が依拠する統計は、ネクスト・ステップス・エージェンシーの実際の年間運営費を測定していない。計画された値からその年に運営費がどの程度削減されたかを測定しているのである。

 

 

 

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