1998年10月1日、OSFAPのCOOに、グレッグ・ウッズ(Greg Woods)が任命された。ウッズは、教育省の公務員ではなかった。彼は、機械工学士の資格をもち、93年以来、NPRでIT(アクセス・米国)、顧客サービス、規制改革担当の次長を務めていたという人物である26)。
また商務省のUSPTOは、2000年3月29日、1999年米国発明家保護法(American Inventors Protection Act of 1999, Public Law 106-113)27)の規定により設立された。USPTOは、従来の特許・商標局(Patent and Trademark Office:PTO)がPBO化したものである。PTOの長は、特許・商標担当商務次官補・PT局長(Assistant Secretary of Commerce and Commissioner of Patents and Trademarks)だったが、USPTOの長は、知的所有権担当商務次官・USPTO長官(Under Secretary of Commerce for Intellectual Property and Director of the USPTO)であり、上院の助言と同意により大統領が任命する。PT次長(Deputy Commissioner of Patents and Trademarks)に代わって設置されたUSPTO次長(Deputy Director of the USPTO)は、長官を補佐するが、長官の指名に基づいて商務長官により任命される。そして商務長官は、特許局長(Commissioner for Patents)と商標局長(Commissioner for Trademarks)を、COOとしてそれぞれ任命し業績契約を結ぶ。現在のUSPTO長官はPT局長だったトッド・ディッキンソン(Q.Todd Dickinson)であり(USPTO次長は空席のまま)、特許局長はニコラス・ゴディチ(Nicholas P.Godici)、商標局長はアン・チェッサー(Anne H. Chasser)である28)。USPTO長官(次長)は、政策の企画・立案について大統領(商務長官)に対して責任を負うのに対し、特許局長と商標局長は、政策の執行について商務長官に対して責任を負うことになる。
3. ロバーツの懐疑主義的な議論
(1) ロバーツの問題意識
クィーンズ大学政策研究スクールのアラスデアー・ロバーツ(Alasdair Roberts)は、ゴアが提案したPBOを批判的かつ懐疑的に検討している。彼の議論は、イギリスではエージェンシー化が進んだのに、米国ではPBO化がなかなか進まない理由を考える際にたいへん参考になると思われるので、やや詳細に紹介しておきたい29)。
Reinventing Govermentの共著者の1人であるデビッド・オズボーンは、連邦官僚制の4分の3が2004年までにPBOに転換されうると述べている。また行政管理予算局(OMB)のある上級職員も、「連邦政府の重要な領域」がPBOへの再編から便益を得るだろうと述べ、クリントン大統領は、1996年の選挙期間中、何百ものPBOが連邦政府内に創設されるだろうと示唆した。オズボーンは、ゴアのプランが2004年までにすべての運営費を250億ドルまで削減できると述べている。