また、ブレア政権の「政府の近代化」白書は、サービス・ユーザーとしての市民に対する「応答性」を強調しており、さらにアカウンタビリティについては、議会オンブズマンの権限の拡大、監査(audit)の強化といった主張を行っている。しかし白書はサービス提供に関する管理者責任を論じているが、議会に対する大臣責任については踏み込んだ分析をしていない。
ブレア政権のもう一つの重要な改革は、公共支出の有効性を改善するというねらいを持って導入された。大蔵省は、1998年に1999−2002年度の包括的歳出見直し(Comprehensive Spending Review; CSR)と公的サービス協定(Public Service Agreement; PSA)を公表したが、さらに2000年7月には、第2次CSR(2001−2004)を公表し、新PSAも設定された。また、この新PSAのもとでの運営上の達成目標と業績測定を含むサービス実施協定(Service Delivery Agreement; SDA)がこの2000年11月に公表された。
執行エージェンシーに関する1999年度の報告書も、PSAは初めて、三年間にわたるサービス改善の達成目標を規定するものであり、そこではインプットから公共サービスのユーザーに重要なアウトカムへの焦点の移行が決定的に行われている34)、と指摘している。このようなアウトカム重視の姿勢は、積極的な側面もあるが、なお残された課題も多い。例えば、ある論者は、アウトカムを基礎としたプランには国際的な経験からも少なくとも二つの問題がはらまれていると指摘する。第一に政策のインパクトは、他の変数のインパクトから切り離すことがむずかしい(このことは学校のパフォーマンスに関する議論で最も明快である。学校間の比較を行う際に生徒の社会的背景などのインパクトを無視できない)。第二にアウトカムの明確化については困難がつきまとう、等の問題である35)。
ブレア政権は、選挙目当ての若干の予算の上積みをしているが、基本的には限られた資源の中でいかに大きな成果を上げるかという立場を変えていないように思われる。これらの問題を含めて、エージェンシーの運営との関連での業績管理のレトリックと実際についてのさらに立ち入った分析については、稿を改めたい。
(君村昌)
<注>
1) Martin Minogue, "Should flawed models of public management be exported? Issues and practices," in Willy McCourt and Martin Minogue, eds., The Internationalization of Public Management, Edward Elgar, 2000, p.22.