これはエージェンシーにまず適用されてきたものであるが、とくに業績管理を重視するブレア政権では、全省庁にベンチマーキングを拡大しようとしている31)。
前述のように労働党は、サッチャーおよびメージャー政権によって導入された行政改革の多くに、当初、懐疑的ないし敵対的であったが、1997年の総選挙の時期までに、新労働党はNPMの用語と実際の多くを援用するようになった。ブレア政権のもとで、NSAsは中央省庁の一部とみなされるようになった。また市場化テストや外部委託は、強制されないことになったが、それらがよりよいVFMを提供するところでは、プラグマティックな対応が見られた。また市民憲章はService Firstとして再出発した。こうして新労働党は、サービス提供の有効性と応答性に一層大きな力点をおき、業績管理の一層の強化をはかってきた。そこにはまた、公・私のパートナーシップにより強い力点をおく傾向があるといってもよい。
これらの改革の特色については、1999年3月に公表された「政府の近代化(Modernizing Government)白書」32)など政府の関連文献を通じて分析することができる。
この白書の中で、政府は三つのねらいと五つのコミットメントを宣言している。ねらいの第一は、政策形成に一層統合的(joined-up)に、戦略的に取り組むこと、第二に公共サービスのユーザーに焦点を合わせること、第二に高い質の公共サービスを能率的に実施することである。
五つのコミットメントは第一に、単に短期的な圧力に対応するのではなくアウトカムを提供するように政策を発展させること、第二に市民のニーズを充足するような十分な公共サービスを実施すること、第三に能率的で高い質の公共サービスを実施すること、第四に市民やビジネスのニーズを充足するために、新しいテクノロジーを活用する情報化時代の政府を推進すること、第五に公共サービスを軽蔑しないで尊重すること、である。
新労働党が使用するようになった統合政府(joined-up government)という用語は、政府への一層統合的なアプローチを意味している。中央行政の機能を130以上のエージェンシーに分割することは、業績の達成目標とVFMに管理者の関心を集中することになったが、そのことは、政府機構を危険なほどに断片化された状態に変えることになった。サービス実施の調整の改善が白書のねらいの一つであり、内閣府の社会的排除対策室(Social Exclusion Unit; SEU)や業績・革新対策室(Performance and Innovation Unit; PIU)はこのような調整を獲得するための方策であった。以前のNSAsはその業務の主管省を持っていたが、SEUとPIUはいくつかの省庁の境界を横断する任務を与えられた33)。