3年後トローサ報告20)は、弾力性と自律性の適当な程度について、エージェンシーと省の中央との間の対立が依然として続いていることを確認した。マッシーによる調査研究21)も、CEsとその主務省との間の関係はきわめて多様であると指摘している。その関係に影響を及ぼす要素として、エージェンシーの規模、予算および政治的関心の対象かどうかなどが含まれるが、エージェンシーおよび主務省の幹部たちのパーソナリティと経験にも左右される。
1990年以降、CEsの管理者としての自律性は、政府が管理者の裁量を拡大する政策を追求するにつれて拡大してきたが、同時にCEsの行動の自由は他の政策によって制約されてきた。すべてのCEsは保守党政府の前述の「質の向上をめざす競争プログラム」(1991)のもとで、その活動を競争にさらし、年々業務改善を立証することを要求されてきた。1995年以来、各エージェンシーは、その主務省および大蔵省に「能率プラン」(efficiency plan)を提出することを義務づけられた。さらにすべてのエージェンシーは、前述のように市民憲章の原則にコミットし、その顧客に対するサービスの質の改善方法を毎年提示するように求められていた。前述のように国民に直接奉仕するエージェンシーは、自らの憲章を発展させ憲章マークの取得者になるように期待されていたが、他方、研究機関のエージェンシーとか、各省庁にサービスを提供するエージェンシーはISO9000シリーズの指標によって示された質を獲得することを奨励された。エージェンシーの基準を高める最近のイニシアティヴは、ベンチマーキングヘの政府の積極的な取り組みである。エージェンシーは、自らの業績を中央省庁の内外の組織との対比で測定する基準としてベンチマーキングを使用することを勧められた22)。
6. 意図せざる結果
上述のような保守党政権の行政改革によって、多くの意図せざる結果が生み出されてきた。すでに総論でもエージェンシー化に伴う主要な問題点を若干指摘してきたが、ここでは二つの重要な論点を挙げてみたい。
まず第一に、最も明瞭な結果は、制度上の断片化である。多数のエージェンシーの設立の結果は、中央省庁のサービスの断片化をもたらしたので、今日サービスの実施が成功するかどうかは、組織を連結するという課題にかかっている。新労働党が後述の白書の中で統合政府(joined-up government)の実現に焦点を当てているのは、多元的サービスの調整問題がより重要な課題となってきたからである。組織の断片化はまたアカウンタビリティをも侵食する。その理由は、制度が複雑になるにつれて、誰が、誰に、何に関して、責任を負うかが不明瞭になるからである23)。