これらの批判に続いて、報告書は政府におけるマネジメントの改善にとって必要な三つの主要な優先順位を指摘した。
・各省庁の仕事は、遂行されるべき職務に焦点を合わせるような仕方で組織されなければならない。
・各省庁の管理層は、有効な政府にとって不可欠とされる業務遂行に必要な経験や手腕を有するスタッフを確保しなければならない。
・政策を実行し、サービスを提供する過程において、VFMの持続的な改善への圧力が、各省庁に対して、また各省庁の内部において存在しなければならない。
したがってイブス報告は、失速したように思われるそれ以前の改革に代わって、管理改革を活性化するための次の段階として提出された。
なお、ネクスト・ステップスという名前については、保守党国会議員T.エガーとマッキンゼー社の経営管理コンサルタントであるN.ブロックウェルによって1982年に作成された「公共部門の能率と有効性―ネクスト・ステップス」(Improving Public Sector Efficiency and Effectiveness: The Next Steps)という調査報告書に由来しているとも言われている12)(1990年代にブロックウェルは首相官邸・政策室のトップ助言者になった)。
3. エージェンシーの設立をめぐる争点と推進体制
ネクスト・ステップス報告に基づく改革は、ニュージーランドを除いて、多くの国々と比較してかなりラディカルな改革を生み出したと言われている。しかし、上述のようにイギリスの管理改革もまた一定の政治的妥協の産物として結実していった面を見逃すことはできない。改革に関わるいくつかの政治勢力の存在を指摘することができるが、ここでは、当初予想された改革の主要なシナリオのうち、二つが修正されたということを指摘しておきたい。
第一に、大蔵省は、権限委譲の強力な推進が公共支出の統制能力に対して与えるインパクトに関して、懸念を抱いていた。エージェンシーが資源を公然と要求し、そのスタッフを統制し、その財政を一層自立的に管理することが許されるならば、当然起こってくる支出追加への新しい要求を大蔵省は統制できないだろうと大蔵官僚は懸念していた。大蔵省の関心は、改革提案によってVFMの達成と有効な支出統制の両方を実現できるようにすることであった。換言すれば、権限委譲によって公共支出の全般的統制が弱体化することは阻止すべきであるが、それが中央統制と一致する枠内での最大限の委譲を支持するというものであった。