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・管理改善や能率への障害を見出すこと。

・将来の改善方策について首相に答申すること10)

イブスは、この諮問を受けて能率室の三人の若いスタッフに管理改革のラディカル調査を命じ、彼らは150人以上の公務員および大臣との面接に基づき、レイナー精査型の90日の調査結果をまとめた。こうして、イブス報告の原案は、1987年の総選挙の直前に総理大臣に提出された。この原案は1988年に公表された最終案よりも一層ラディカルな内容を含んでいたと言われている。この原案の中で、公務員制の改革だけでなく、いくつかの憲政上の習律を改革することも勧告されていた。イブス報告は公務員制度の95%に影響を及ぼす改革を勧告しており、また大臣の名で公務員によって行われるすべてのことに大臣は真に責任を負うことができるというフィクションを退けるために、必要ならば法律によってイギリス憲政の改革を行うことを勧告し、FMIをつまずかせた障害を乗り越えようとした。このことは大臣の過重負担を救い、執行エージェンシーへの責任の真の委譲を可能にするだろうと考えられた11)

しかし報告の原案は、約1年近く首相によって棚上げされることになった。そこには、いくつかの理由が考えられる。第一の理由は総選挙が近づいたことである。中央省庁の有効な管理を生み出すためには一層多くの改革が必要であると強調することは、保守党の大臣が今まで管理改革の成功について演説してきたことと矛盾することになるからである。第二の理由はその報告のインプリケーションは非常にラディカルなので、ホワイトホール内部の既得権が影響を受ける可能性があったからである。

もっとも、大蔵省を初めとする多くの方面からの不安、抵抗にもかかわらず、最終的には、首相の強力なリーダーシップのもとで、内閣はイブス報告の受け入れを公式に承認するに至った。このような経過を経て、能率室のネクスト・ステップス報告は、1988年2月18日に正式に公表された。

この報告書は、1979年以来、行政管理の面でいくつかの前進があったことは認めたが、さらに前進するためには、組織構造の面などでかなり障害があると結論づけている。イブス報告の分析は以下のごとくである。

・公務員制度は単一の組織として管理されるにはあまりにも規模が大きすぎるし、多様でもある。

・大臣の負担過重は、管理問題から注意をそらしている。

・中間管理者の自由は、階統制的統制によって阻害されている。

・結果の達成がほとんど重視されていない。

 

 

 

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