そして、こうした経緯のなかで積み残され続けてきた諸課題としての、一括管理・一括採用、政治任用、官民の人事交流、天下りの規制、中央人事行政機関の責任と機能の分担など、制度の根幹に関わる問題が、すべからく行革会議の検討課題に網羅されることになったと言えよう。
もとより本章において、行革会議の公務員制度改革案全体に対する評価を試みる余裕はないが、上記の諸課題を包括的に列挙した行革会議最終報告書の第5章「公務員制度の改革」の部分は、他の各章と比較して極めて少量に留まり、そこでは、職員の身分を公務員とするか否かで膨大な議論の時間を費やした筈の、独立行政法人に関する記述を、まったく見いだすことができないのである。おそらくらこうした課題も含めて、行革会議としては、公務員制度改革のより具体的な検討について、「関連制度を踏まえた幅広い検討が必要」であるとして、「専門的調査機関である」公務員制度調査会に具体的な検討を委ねたのであろう。けれども、こうした行革会議の意を受けて1999年3月に出された公務員制度調査会の答申のなかでも、独立行政法人導入に伴う公務員制度改革の具体案については何らの見るべき論及がなく、僅かに「独立行政法人の人事システムに関しては、その制度の基本となる共通の事項を定める法令の検討結果を踏まえ、今後、必要に応じて別途調査会で検討することとする」との注記が付されるのみであった15)。
本章の冒頭で述べたように、独立行政法人の導入は、戦後日本の行政組織に新たな組織編成の原理が付加されたことを意味する。しかも、制度導入にあたっての最も重要な条件が、職員に対する公務員としての身分保障という点にあった。そうであればこそ、独立行政法人の導入は、新たな組織に関わる制度設計と、新たな公務員制度のあり方を探る制度設計の両者を架橋する性格をもつものであり、双方の面からの十分な検討を必要とする課題であった。公務員制度改革については、2001年6月をめどに、政府において具体的な改革案の取り纏めが行われているが、今回の独立行政法人導入の経緯は、行政改革の過程で「組織」の改革と「人」の改革との、目的を共有する連携が不可欠であることを、あらためて認識させるものであったと言えよう。