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言うまでもなくその最大の理由は、特定独立行政法人が大半を占めたことである。これによって「組織の外部化」と「人の内部残留」という制度の矛盾が当初から内包され、したがってこの状態が続く限り、組織管理と人事管理が別次元に設定され、それゆえ「職務」と「人」と「組織」の関係が分断される、極めて不自然な「行政組織」と「公務員」の関係が形成されている。こうした現状を前提としたうえで、今後の公務員制度改革のなかにしめる独立行政法人の意義と限界を明らかにするという意味で、90年代行革の展開のなかでの「残された課題」として、以下に「職務」「人」「組織」に関わる3つの論点を挙げ、結びに代えることとしたい。

 

(1) 公務概念の再検討

第1の論点は、やや根源的な問題として、政府行政機関が果たすべき「公務」と独立行政法人が果たすべき「公務」との間にどのような共通性と相違があるのかという問い掛けである。

日本の公務員制度の基本法は、言うまでもなく国家公務員法である。しかしながら、そもそも「国家公務員とは何か」を定義する規定は、同法の条文のいずれにも見いだすことはできない。したがって人事院によれば、同法第2条第4項の「(前略)人事院は、ある職が、国家公務員の職に属するかどうかおよび本条に規定する一般職に属するか特別職に属するかを決定する権限を有する」との規定を適用する場合の基準として、通常以下の三つの要件が挙げられる。

1] 国の仕事に従事していること

2] 国の任命権者から任命されていること

3] 原則として、国の財源から給与を支給されていること14)

これらの基準に照らしてみると、独立行政法人職員には、1]および2]の基準は当てはまらない。3]については、独立行政法人の人件費を含む財源について通則法第8条で「政府は(中略)各独立行政法人に出資することができる」と規定され、辛うじて部分的に当てはまると解釈することも可能である(ただし、広義に解釈すれば国からの補助金などを含む財源補助を受けている団体の職員についてすべてこのことが当てはまることになる)。

いずれにせよ、上記の基準で判断する限り、論理的に言えば、独立行政法人の職員を国との雇用関係にある国家公務員と見なすことができないことは明らかである。それにも関わらず、制度の大半を占める特定独立行政法人の職員が国家公務員とされたことから、あらためて、政府が第一義的責任を負うべき「公務」と、二次的な意味での「公務」(独立法人化の理論的根拠というべき通則法2条の規定)、それ以外の「非公務」とを区分する基準とは何かという点が、制度設計と制度構築および運営のいずれにおいても避けられない課題となってくるであろう。

 

 

 

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