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こうしたケースにおいて、特定独立行政法人の職員については、従来の現業職員のケースとは異なる、何らかの新しい諸要素(例:長の裁量範囲、中期目標、中期計画、評価委員会の勧告など)を考慮する必要がでてくるであろう。現時点で人事院としては、おそらくケース・バイ・ケースで対応するしかないであろうが、独立行政法人職員と一般職公務員との間の格差や不平等をもたらすことのないような、方針の一貫性の確立が求められよう。

 

(5) その他

行革会議最終報告の記述等では、企画立案部門と実施部門との機能の二分化をはかるとともに、これら両部門間での人事交流の必要性が強調されている。同様に、平成12年度公務員白書でも「弾力的・開放的な人材の登用と活用」のために、企画立案部門の公務員にもできる限り現場経験を踏ませることの必要性が指摘されている。こうした人事交流は、単に本省と実施庁との間のみを想定するのではなく、その対象をより広く、独立行政法人も含めて、実施できるようにしてゆく必要がある。独立行政法人を、国の行政組織から切り離された組織であるとの理由で、実施部門の人材がそこに封じ込められ固定化するのであれば、弾力的かつ開放的な人事の運営を期待することは難しい。しかし他方で、主務省と独立行政法人との間に、従来の特殊法人との間にみられたような、「出向」という名目での天下り的人事が横行することも、防がねばならない。両者が対等な関係において人事交流をおこなうことが可能となるように、あくまでも能力活用を目的として、職務の内容と責任に関する統一的基準を、人事院などが中心となって準備することが必要になるのではないだろうか。

また、官民交流人事の拡大や期限付き任用なども、主務省の助言や指導などをまつことなく、各独立行政法人が主体的な判断で、積極的に取り入れる努力を行なうべきである。こうした領域こそ、国とは別個の法人格をもつ組織として、独立行政法人がそのメリットを、効果的に発揮できる領域に他ならないであろう。

 

4. 展望的課題

第2節で述べたように、イギリスでは行政機能の二分化を第一義的目的として導入されたエージェンシーが、伝統的な「公務」の概念に再検討を迫り、「公務」の外縁部分の融解と中核部分の凝縮化をもたらすことになるのかが、議論の的とされた。これについての結論や評価を下すことは、未だ早計であろう。しかし、エージェンシーを模倣した日本の独立行政法人制度は、紆余曲折した導入過程の結果、こうした議論そのものに馴染まない組織形態に帰着することとなった。

 

 

 

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