(4) 分限・身分保障について
ここでは、特に特定独立行政法人の職員の場合に限定する。通則法第51条では「特定独立行政法人の役員および職員は、国家公務員とする」とされ、職員について「国家公務員型」とか「国家公務員としての身分を保障された者」といった表現ではなく、きわめて単純明快に規定されている。したがって、特定独立行政法人職員の人事については、原則として現行国家公務員制度の体系(無論、通則法第59条において、労災補償保険法や給与法など若干の法の適用除外や、現行国家公務員法の一部読み替えについて詳細な規定があるが)のなかで扱われ、分限・身分保障についても、同様に従来の国家公務員法の仕組みを基本として、運用されると考えられる。
通則法の規定では、独立行政法人の職員の任命権はその長に与えられている(通則法第26条)。しかし、解任に関しては役員についてのみ規定されている(通則法第23条)が、職員の免職に関する特段の規定はみられない。特定独立行政法人の職員については、国家公務員法第75条第1項「職員は、法律又は人事院規則に定める事由による場合でなければ、その意に反して、降任され、休職され、又は免職されることはない」との規定が適用されるとともに、これに対応する同法第78条に規定する職員の意に反した降任や免職も当然ありうることは、通則法の59条の読み替えのなかで同条第4号の「官制」とあるのを「組織」と読み替えることが規定されていることからも、類推できよう。やや煩瑣になるが、国家公務員法第78条4号を読み替え「組織若しくは定員の改廃又は予算の減少により廃職または過員を生じた場合」には、意に反した人事がおこなわれることもありうる。またそれゆえに、国家公務員法第89〜92条に定められている人事院への不服申し立てについてもまた、特定独立行政法人の職員には権利として認められる筈である。したがって、現に郵政など現業職員から多くの申し立てがなされているように、今後は特定独立行政法人の職員からも、何らかの不利益処分に関する人事院への不服申し立てが行われる機会も当然想定される。
国からは独立した法人格をもつそれぞれの機関において、自己の「組織もしくは定員の改廃又は予算の減少」を理由として、人事管理や人事異動がおこなわれることは当然であり、本来的に他者がこれに介在することは好ましくない。但し、それが国家公務員を対象としている限りにおいては、現行法令の適用によって上記のようなケースの生じる可能性が考えられる。