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しかしながら、業績給の考え方自体は、従来の公務員給与体系のなかにも制度として反映されており、特別昇給や勤勉手当てなどで具体的に可能であった。それにも関わらず、業績給に対しては、評価者の主観に左右されやすいなどの理由で、実際には持ち回り的な運用がなされる傾向にあったと指摘されている13)。こうした慣例が定着してきていることに加え、特定独立行政法人の給与支給基準については通則法57条第3項で「一般職の職員の給与に関する法律(中略)の適用を受ける国家公務員の給与…その他の事情を考慮して定めなければならない」と規定され、実際上はこれまでの一般職公務員給与を規定してきた人事院勧告の内容に強く制約される可能性が残されている。したがって、独立行政法人制度の導入によって、これまで部内および官民の均衡原則を最優先してきたとされる日本の公務員給与体系に、業績給のシステムをどこまで浸透させることができるかの、一つの試金石になると言えよう。

そのためには、給与を含む人事管理の責任を、通則法が想定するとおり各独立行政法人に分権化することが、何よりも前提となる。それゆえ給与体系の基本となる職員の人事評価、業績評価の方法について責任ある基準の策定を、独立行政法人の長および役員と職員団体との間の、適切な協議と合意に基づく形で、自主的に取り決める努力が求められるであろう。

 

(3) 独立行政法人の長の人事について

独立行政法人の長の任命権は、主務大臣にあるとされる(通則法第20条)。その任命基準については同条で「当該独立行政法人が行う事務および事業に関して高度な知識および経験を有する者」および「前項に掲げる者のほか、当該独立行政法人が行う事務および事業を適正かつ効率的に運営することができる者」と定められている。こうした基準、とりわけ前段の規定をみる限り、長たるべき資格要件に、それぞれの機関およびそれを所轄する主務省における行政上の知識や経験が重視されることが法令上の根拠として明示されており、それがために、独立行政法人の長のポストが、結局本省の公務員出身者による天下り先になってしまうのではないかと懸念される。さらには、今回独立行政法人化される試験研究機関や研修機関の一部には、従来からその長のポストが本省の官僚のキャリア・パスの一つとして扱われる慣例が見られる。独立行政法人の自律性、自主性を確保し、人事の公正さを保つためにもこうした慣例は一掃されなければならない。むしろ、後段の「事務および事業を適正かつ効率的に運営することができる者」との基準を積極的に解釈し、イギリスにおけるエージェンシーの長の公募制に倣って、民間部門を含めて幅広い分野からの人材の任用をはかるべき手立てを講じる必要がある。長の人事の運用に、こうした方法が導入されるならば、そこに官民競争原理の導入による組織の活性化をもたらす即効性を期待することができるであろう。

 

 

 

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