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こうした観点は、すでに引用した97年8月の藤田氏の意見書において、独立行政法人導入の論拠としての機能の分離論は「絶対の基準であるわけではない」という言葉に結実してゆく。したがってこれに続く同意見書の論旨では、独立行政法人という組織が、国の「行政組織の『中』に含まれるのか『外』に属するものか」が論点となる。これについて藤田氏の見解は、以下のように示される。

「組織の上では、それは国の行政組織と一線を画するのであって、そうでなければ、垂直的減量の受け皿として意味を有さない。従って、その職員の身分も(中略)本来、国家公務員ではありえない」

このように、行革会議の具体的な議論の前提としては、独立行政法人の組織を規定する正当性は、行政の「機能」の減量化を目的として、その職員も含めた国の行政組織からの分断にあることが、極めて明快に主張されていた。

しかしながら第2に、こうした主張と並行する形で、行革会議での制度設計を詰める議論では、独立行政法人の職員に公務員としての身分保障を求める意見が、連合を代表する芦田委員から繰り返し主張された。こうした議論の平行線は、行革会議の作業が終盤に入る同年11月の集中審議まで続き、同月18日の第38回会議の時点でも、職員の身分を公務員型・非公務員型の選択制にするとの事務局案に対し、芦田委員からなお異論が出されている。そして、最終的に公務員型と非公務員型の両方の身分を用意することが独立行政法人制度の円滑な導入の条件とされ、最終報告での次のような表現で、この問題の決着がはかられた。

「独立行政法人の職員の身分は、原理的には現行と同じままの国家公務員とは相容れないものと考えられる。しかしながら、独立行政法人の創設に伴い、円滑な移行その他諸般の事情にかんがみ、職員の身分について、国家公務員の身分を与えることとし、併せて、国家公務員としない類型も設けることとする」。

第3に、上記の問題が最も鮮明な政治的争点として具体化したものが、言うまでもなく郵政三事業の取り扱いであった。この経緯をめぐる詳細な記述は第一部第1章に譲るが、行革会議での当初からの議論では、この分野の民営化ないし独立行政法人化が当然の課題として想定され、それが97年8月の中間報告における郵政三事業の一部民営化および外局化の提案という形で表現された。けれども、こうした方向性に対する与党および労働組合双方からの政治的抵抗力の作用は、職員の身分の問題に多大な影響を及ぼし、事実上独立行政法人の職員を現行国家公務員の身分として据え置く案に、円滑な制度導入という意味での手順上の根拠を与えることとなった。

 

 

 

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