ここでは、論理的に独立行政法人を広義の特殊法人と同類型に属するとしたうえで、現実的には後者を前者の類型に組み替える努力を通じて、両者の相違を示すことが必要であるとの認識が示されている。さらに最終報告では、以下のように特殊法人改革を強く意識した表現がなされている。
「今回創設される独立行政法人制度においては、各法人の目的・任務および業務・組織運営の基本的基準などが法令等によって明確化され、国民のニーズとは無関係に自己増殖的に業務を拡張することが防止される仕組みになっている。さらに、目標設定や評価に関する仕組みの導入、弾力的な財務運営、組織・人事管理の自律性の確保、効率化やサービスの質の向上に対するインセンティブの付与、徹底的な情報公開、業務の定期的な見直しなど、組織・運営に関する共通の原則が制度化されており、現行の特殊法人について指摘されている問題点は克服される仕組みとなっている。
(中略)したがって、従来の特殊法人についても、先に述べた徹底的な見直しをまず実施し、なお維持継続すべきと判断された業務については、独立行政法人化の可否についての検討を視野に入れるとともに、特殊な法人として存置すべきと判断された法人についても、独立行政法人制度のねらいとするところが生かされるよう、適切な運営が図られなければならない」。
もとより、一部の引用文をもって全体を評価することの愚は、厳に慎まねばならない。ただし、これらに見られる趣旨においては、独立行政法人の制度に対して、従来の特殊法人の問題点を強く意識しその克服という視点に立って制度設計することに相当の重点が置かれてきたと理解できよう。言い換えれば、独立行政法人制度は、新たな行政機能を付与された特別の組織の創設という意義よりも、特殊法人の改革のためのツールとしての性格を色濃く反映したものと位置付けることができる。すなわち、論理的には独立行政法人と特殊法人とは同一の組織形態に属するものとして捉えられるが、従来の特殊法人が国による過度の統制、天下りに象徴される人事の不公正、業務内容や財政運営情況の不透明さなど多くの批判があることを踏まえ、組織や運営の自律性の確保、業務内容や財務諸表などの公開による透明性の実現、外部機関による事後評価の導入などの制度設計を施すことにより、両者の相違を明確にすることによって、独立行政法人制度導入の意義を明確にすることが意図されていると言えよう。こうした観点を端的に示す例として、ある政府広報誌のなかでは独立行政法人を特殊法人の問題点と比較したうえで、次のように記述されている。
「そこで、独立行政法人制度については、『独立行政法人通則法』により、事後評価などの制度を共通して適用される運営原則として定めており、特殊法人の問題点を解消することを念頭に作られています」7)。