第3章 独立行政法人の課題 ―公務員制度との関係を中心に―
1. 問題の所在
2001年4月をもって、独立行政法人制度が開始される。内閣機能強化や省庁再編と並んで1990年代の行政改革における柱の一つとされるこの制度の導入は、行政組織を施策の企画立案部門と実施部門に二分化し、国から独立した法人格をもつ個別の組織に何らかの公的サービスの実施を委ね、しかもその大半の組織が国家公務員によって運営される(特定独立行政法人)という形で、従来の中央行政機構の組織とは明らかに異なる組織編成の原理が、新たに付加されたことを意味すると言えよう。本章を執筆する時点(2001年1月)で確定している独立行政法人の概要は、章末の表1および表2に示すとおりである。これらの概要から、現段階で指摘しうる独立行政法人制度の問題点を列挙するとすれば、以下の4点となろう。
第1は、言うまでもなく制度的問題である。独立行政法人自体は国家行政組織法の適用外の位置に置かれ、それゆえ内閣の行政権行使の責任の及ばない組織としての性格をもちながら、他方ではいわゆる公務員型とよばれる特定独立行政法人が大多数を占めていることである。すなわち、組織における「外部化」と職員の「内部残留」という変則性を当初から内包したまま、この制度がスタートすることになる。
第2は、制度導入の手順の問題である。行政改革会議(以下行革会議と略す)の最終報告などで強調されているところの独立行政法人導入の本来的目的は、言うまでもなく「行政の垂直的減量」と「行政機能の二分化」である。しかるに、この本来的目的に照らして、言わば「本丸」とも言うべき諸部門(印刷・造幣、病院・療養所、自動車検査など)での実施が、何れも2002年度以降に先送りされ、また職員定数約13万5千人を擁し公務員定数削減の鍵と言われる国立大学については、2003年までに結論を出すとされ、独立行政法人への移行自体が不確定である。
第3は、上記の問題と関連する現実的な問題である。すなわち、2001年4月に実施される諸機関についても、その半数以上を試験研究機関が占め、上記の「行政機能の二分化」という目的に照らして、独立行政法人化の意味が必ずしも明確ではない。