ヒアリング調査によれば、例えば、兼官が認められるまでにはなお紆余曲折が想定され、官舎の問題も非公務員型であるため、未解決である。
また、事業活動に伴う剰余金は、インセンティブ付与のために使うことはできず、事業拡大にのみ使うことができるとされているのは、研究機関を理解していない。政策評価を研究分野とすることによって財務省から交付される交付金は、個別積算をおこなって要求しているが、これでは、認可予算と変わらないという不満もある。
さらに、独立行政法人が策定しなければならない中期目標とその策定のために必要な評価については、政策研究機関という特殊性から政策研究の成否をみきわめるために5年は必要であるとしたものの、本来評価する側とされる側のインターアクションで作られるべきアウトカム指標については、「論文総数に対する他の研究論文に引用された比率」や「政策部局からの情報・資料提供数、レクチャー依頼数」などを挙げているものの、固まったものとはなっていないという。表1に挙げたように、評価のあり方については、評価委員会で検討中であるが、その論点として、「政策研究の内容・政策形成への貢献度の評価を数値に基づいてのみ評価することは妥当ではないのではないか」、「総合的な政策研究を本格的に行うことができるこれまでの日本にはないユニークな性格の研究所の評価を、通商産業研究所時代や他の研究所との比較で見ることは必ずしも妥当ではないのではないか」、「研究所の評価は本来質的な充実度で見るべきであり、これを補うために可能ならば量的な比較評価も参考とするということではないか」等の、評価に関わる基本的な事項が提起されており、非公務員型独立行政法人として政策研究機関の評価のあり方は、年俸額の決定方式や研究プロジェクトの効果測定の問題等に繋がるだけに、慎重に検討されているようであり、どのような評価手法が提示されるのか、大いに注目されるところである。
(d) 評価
経済産業研究所は、非公務員型であることを活かそうとする、いわば、独立行政法人の積極型ということができる。非公務員型のもつメリットを最大限活かしたシンクタンクを目指している点は評価できるが、兼官や福利厚生面での既存公務員制度との調整は前途多難であり、予算の確保も含め、制度のメリットを活かす場合の既存制度の壁は依然厚いといわなければならない。