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さらに企業の申請手続きを簡素化する。3部必要だった提出書類を1部にしたり、英文の文書の日本語訳を完全に不要にしたりして書類を減らす。また03年度をめどに電子メールでの申請を認める考えだという8)

(d) 非公務員型独立行政法人のデメリット

ヒアリングによれば、外国政府との折衝や審査が困難な案件については、外交交渉として本省でおこなう形で切り分けをしたので、純粋に執行部門の独立行政法人化となり、デメリットはほとんどみられないとのことであった。ただ、これまで貿易保険は、民間でできなかったので国でやっていたという経緯があることから、政府が再保険を引き受けるにしても、財務会計上の自由がある程度確保されなければ、つまり、独立行政法人の特色たる中期計画や目標にあまりに拘束されると財務体質が硬直化し、引き受けが縮小する懸念があるという。それだけに、評価基準の設定を、引き受け量にするのか、査定時間の短縮といったサービス改善に置くのか等についての検討は慎重に進めたいとのことであった。

(e) 評価

日本貿易保険の場合は、執行部分の分離という独立行政法人制度本来の目的を達成した事例といえるが、その際、これまでの国直営による弊害の一掃を狙ったものということもできる。すなわち、査定ノウハウの蓄積なく保険業務を実施していたり、債権回収は国が原則であるにもかかわらず、これまでは当事者に回収させていたりなど、制度と実態の甚だしい乖離について、実態にあわせる際に独立行政法人制度を利用したということがいえよう。その結果として、利用者にとってのサービス改善に繋がる可能性は高いと考えられる。ただ、多くの特殊法人と同じように、所管省のOBを理事長として迎えたことで、組織の弾力性や本省との分離がどこまで確保できるかは未知数であるといわなければならない。

 

(2) 独立行政法人経済産業研究所(旧通商産業研究所)

(a) 組織の概要

前述の経緯を経て正式には01年4月に誕生する非公務員型の独立行政法人経済産業研究所であるが、その事業概要を要約すれば次のとおりである。

「経済産業省が従来型の行政・政策の殻にとどまらず、ダイナミックかつ斬新な政策の企画立案能力を強化し、国際社会の中で積極的な政策展開を行っていくことが求められるとき、かかる政策立案、発信能力の強化を図るためには、内部人材が民間や学会の有識者、さらには海外の一線の研究者と切瑳琢磨し、中長期的に戦略的な視点をもって、世界的水準に達した調査分析、政策研究、政策提言を行う、いわば政策形成の新たなプラットフォームとなりうるような機関が必要不可欠である。

 

 

 

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