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前述のように、貿易保険の独立行政法人化に際しては、外交上の秘密情報の活用が移行の際のネックとなってきたが、執行と企画を分離する際、本省貿易経済協力局貿易保険課に企画立案やリスク分散のための再保険業務などのため35人の職員を置くことにしており、合計すると現在より30人程度増える見通しである。本省では、審査の難しいプロジェクト案件や相手国政府の保証のない案件を積極的に手がけることで、民間の貿易・投資の拡大を支援する予定である。

(c) 非公務員型独立行政法人の特性をどう活かすか

民間からの採用にあわせて、業績給を採用する予定である。すなわち、一人ひとりについて業務の効率性や迅速性などの成果を有識者による評価委員会がチェックし、職員は月収の約5か月分の賞与について、公務員の平均より20%増から20%減まで5段階の差をつけ、役員報酬も業績に応じて変動させる。また、組織の簡素化や個々の職員への権限委譲を併せて実施し、役職員のやる気を引き出す予定であるという7)

また、サービスの向上にも意を用いる予定である。すなわち、これまで国営であるため査定ノウハウの蓄積がほとんどなく、相手企業のリスクを審査する能力が乏しいため、原則として相手国政府が債務保証する案件しか引き受けない現状では、債務保証すれば対外債務が膨らむので途上国ではこれを拒否する政府が多く、「政府保証がなくても貿易保険がつく外国企業との受注競争に負ける」(大手商社)との不満が出ていたことから、独立行政法人化を契機に、政府保証のない案件でも積極的に引き受ける方針に転じる。焦げ付きリスクに応じた5段階程度の保険料体系を設定し、民間金融機関の審査部門などから20人程度を採用し相手企業の財務内容を審査する体制を強化して、リスクに応じた保険料負担を国別の保険料に上乗せして貿易保険を適用することとする予定である。

焦げ付いた場合の処理では、国(貿易保険)の保証割合を引き上げ、債権者企業の負担を軽減する予定である。すなわち、戦争など不可抗力のリスクに備える「非常危険」と、相手企業の破産などに備える「信用危険」を対象にした貿易保険は、相手国や品目によりそれぞれ97.5%、90%を上限として複数の保証割合が定められているが、01年4月から上限に一本化する。

独立行政法人の業績向上のため業務のアウトソーシング(外部委託)も進める予定で、貿易保険の引き受け増加を狙い、銀行や損保会社などに保険契約の仲介を委託する。これまで債権者の企業が担当してきた焦げ付き債権の回収も、01年4月から独立行政法人が肩代わりすることになっているが、現地の事情に詳しいサービサー(回収業者)を活用する。

 

 

 

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