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そこで、政策立案部門と制度執行部門の分離という理念にそって、民営化すら考慮していた貿易保険と、非公務員型の政策研究機関に組織としての弾力性の可能性をみた通商産業研究所とは、非公務員型の独立行政法人日本貿易保険、経済産業研究所として再スタートを切ることになったのである。

 

3. 非公務員型独立行政法人の事例研究

(1) 独立行政法人日本貿易保険

(a) 貿易保険とは

貿易保険とは、通常の民間の海上保険などで対象とならない貿易取引や海外投資において生ずる取引上の危険をカバーするものであり、50年に輸出振興策の一環として創設された。現在は、貨物の輸出や技術の提供、前払い輸入、仲介貿易、海外投資や事業資金の貸付など日本企業が国際経済のなかでおこなっている多岐にわたる対外活動に伴うリスクを広くカバーしており、発展途上国の累積債務問題や91年のIJPCの保険事故などによる累積赤字を有するものの、単年度事業収支は大幅な黒字であり、引受保険金額は約13兆円(平成10年度実績)と世界最大である。これまで、貿易保険は、事故率の算定が難しいこと、同時多発する傾向があること、民間の商業採算ベースに乗りにくいこと、貿易・投資政策を遂行する手段としての政策性を有すること等から、国営保険として運営されていた。諸外国では、99年1月現在で財団法人日本貿易機構が協力スキームの取り決めを締結している15の貿易保険機関をみた場合、国営はイギリス・ECGD(輸出信用保証局)、イタリア・SACE(輸出信用保険特別局)の2か国にすぎず、輸出入銀行が米国、トルコの2か国、公社が韓国、イスラエル、カナダ等4か国、民間会社がフランス、ドイツ等3か国となっている5)。独立行政法人への移行に際しては、国でなければ引き受けられないようなカントリーリスク等の引き受けをおこなうこととなることから、国が再保険の引き受けによって信用力の補完をおこなう。

(b) 組織の概要

理事長には対外通商問題の責任者である通産審議官を2年半つとめた荒井寿光氏が就任することになった。約180人の役職員は、経済産業省からの出向者が中心だが、2割近い約30人を銀行、生損保、電力会社、財団法人貿易保険機構から採用し、役員や部長、グループ長などに登用するという6)

 

 

 

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