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このように、通産省は、特許庁の独立行政法人化を阻止するためにも、貿易保険については、取引材料として、早くからその独立行政法人化を考えていたということができるのである。

(b) 通商産業研究所の独立行政法人化検討過程

97年8月の集中審議を経て、行政改革会議の議事録では、すでに貿易保険は、独立行政法人とする代表例としてたびたび議事録に載るようになる。ただ、独立行政法人の職員の公務員身分については依然議論が分かれていた。これに関し、9月の第6回企画・制度問題及び機構問題合同小委員会において、主として公務員身分をめぐって長時間の議論が行われているが、その際、試験研究機関を統廃合して原則独立行政法人化することの可否に関連して、政策研究機関の総合化が検討されていることに留意する必要がある。しかし、各省庁の持つ政策研究機関の統合は立ち消えになり、その一方で、試験研究機関の独立行政法人等の対象として通商産業研究所も含まれてはいたものの、11月の第36回行政改革会議では、委員の発言要旨のなかで、「試験研究機関については、経済研究所、科学技術政策研究所、財政金融研究所、通商産業研究所などソフト面の研究を行っている機関を除き、各省庁とも独立行政法人化に前向きと聞く。また、その際には国家公務員身分では不便なのでむしろこれを望まないという声もある」との発言があり、この時点では、通商産業研究所の独立行政法人化は考慮されていなかったようである。

秋の集中審議の2日目(第38回行政改革会議)において、激論の末、公務員型の独立行政法人(特定独立行政法人)と非公務員型の独立行政法人が作られることとなったが、この時も、「通商産業研究所は、本省に残してほしいとの希望がある」との発言がみられ、政策研究機関については、独立行政法人化の対象外とし、さらに精査することになった。

舞台は、中央省庁等改革推進本部へと移る。

行政改革会議が終わってほぼ1年間、独立行政法人をめぐる議論は、国立大学の独立行政法人化が中心であったが、その一方で、中央省庁等改革推進本部では独立行政法人の制度化が進められていた。このなかで、98年10月から翌99年1月にかけて、貿易保険の独立行政法人化の具体的検討と同時に、通商産業研究所の独立行政法人化が急浮上する。その背景には、国家公務員の25%削減という数値目標を掲げた「中央省庁等改革に係る大綱」の策定があり、少しでも定員の枠外に出す再検討が各省庁に要請されたためであるといわれ、続く1月から4月のスリム化関係計画に至る間に、非公務員型独立行政法人の制度の概要がようやく明らかになった。

 

 

 

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