2. 日本貿易保険、経済産業研究所の非公務員型独立行政法人の選択過程
(1) 独立行政法人化の背景 ―通商産業省から経済産業省へ
今回、経済産業省所管の2独立行政法人を取り上げるにあたって、その背景として、中央省庁再編のなかで、通商産業省が、経済産業省へと、他省庁との組織的再編を経ずに、しかし、大きく衣替えしたことを挙げなければならないだろう。
すなわち、01年1月に発足した経済産業省の行政組織を、従前の通商産業省と本省の局単位で比較してみると、通商産業省時には、大臣官房を除き、産業政策、通商政策の2総括局、そして、機械情報産業、環境立地、基礎産業、生活産業、貿易の5原局体制であったが、経済産業省では、原局が個別産業を取り扱う局を再編することによって、産業技術環境、製造産業、貿易経済協力の3局に統合され、代わりに、経済産業政策、通商政策、商務情報政策と政策という名称を冠した局が3つに増加している。これは、これまでの「産業行政」からの訣別と、マクロ経済政策から外交、さらには通信等、他省庁の所管に対しても、積極的に企画提案(他省庁からいえば口出し)をしていこうとする意思表明であるということができる。
確かに、これまでも、通産省は、ターゲット・インダストリー・ポリシーにより、経済大国日本を作り上げてきたとの自負の下、他省庁との間で縦横無尽に政策展開をしてきた。しかし、経済のグローバル化によるターゲット・インダストリー・ポリシーの無力化や、迫られる経済構造改革などに対して従前のような政治への働きかけによる政策化手続きの有効性の喪失などにより、通産省は「不必要な役所」の筆頭とまでいわれるようになり、巷間伝えられるように、通産省職員の士気の低下、民間への転職にまで及んでいるといわれていた1)。
そこで、通産省は、政策官庁としての生き残りをかけて、「中央省庁再編を審議した96年11月以降の行政改革会議に対してもっとも積極的に対応したといわれている。事実、97年6月4日の第16回行政改革会議による通産省ヒアリングにおいても、「行政改革の趣旨に照らし、各省庁において、今後取り組むべきと考える(取り組もうとする)改革方策をご呈示願いたい」という行政改革会議からの質問に対して、「政策実施部門の効率化・質の向上や政策企画立案部門の問題解決能力の強化という考え方は、重要な基本方向であると考える」2)とし、改革方策の一つとして提示された独立行政法人の導入についても積極的な姿勢を示している3)(なお、この経緯については後述する)。