日本財団 図書館


(2) 事例研究の対象の選択

周知のように、国が行う制度執行業務のうち、89業務(検査5、研究開発57、サービス提供27)が独立行政法人化され、整理統合のうえ01年4月に第一陣として57の独立行政法人が設立され、04年までには60の独立行政法人が設立されることとなる。このうち、非公務員型の独立行政法人は、文部科学省所管の国立青年の家、国立少年自然の家、経済産業省所管の通商産業研究所、貿易保険の4法人(全体の6.7%)に過ぎず、その99年度末の定員は、国立青年の家316人、国立少年自然の家271人、通商産業研究所39人、貿易保険196人の計822人と、独立行政法人移行予定の事務事業従事者全体(73,602人)の1.1%に過ぎないが、本調査研究では、上述の事例研究の意義に照らして、事例研究の対象として、非公務員型の独立行政法人を選択することとし、わずか4つの非公務員型独立行政法人のうち、経済産業省所管の通商産業研究所、貿易保険の担当者に対するヒアリング調査を実施した。

通商産業研究所(01年4月以降は独立行政法人経済産業研究所、以下、経済産業研究所と略)は、数ある試験研究機関(今回、独立行政法人移行予定の研究職は約8,400人に及ぶ)のなかで、唯一、非公務員型を選択した研究機関であり、一方、貿易保険(01年4月以降は独立行政法人日本貿易保険、以下、日本貿易保険と略)は、政策と執行の分離という理念の具体化にそって、貿易立国日本としての企画部門と貿易保険という事務執行との分離を果たそうとするものであり、わずか2つのヒアリングではあるが、独立行政法人制度のなかでは典型的事例を取りあげたということができよう。

 

(3) 事例研究の限界

以下、ヒアリング調査結果を基にした非公務員型独立行政法人の分析に入るが、その前提として、今回の事例研究の限界について付言しなければならない。

それは、独立行政法人への移行に向けて、本章執筆時点では、なお、その作業が続いていることである。周知のように、99年7月には「独立行政法人通則法」と「独立行政法人通則法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律」が制定され、同年12月には独立行政法人の設置に関する59の個別法と独立行政法人関係法整備法が制定された。これにより、独立行政法人の組織、運営、管理等に関する政令、移行経過措置に関する政令、9府省に設けられる独立行政法人評価委員会令等の関係政省令の整備が進められ、具体的な独立行政法人の設立準備に着手することとなったが、本省たる各省庁の再編準備のため、これら関係政省令の整備は遅れがちであった。そのため、本章執筆時点での資料的な制約は免れがたく、01年4月以降の各独立行政法人の成立後に見直さなければならない事項は多々あると考えられる。もっとも、それでもなお、上述した事例研究の意義を失うものでないことは確かである。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION