3. 独立行政法人の法案制定過程
(1) 中央省庁等改革基本法の成立
最終報告を受けた政府は翌4日の閣議で、最終報告を最大限尊重すること、早急に中央省庁再編等の準備体制に入ること等を決定した。あわせて、年内に中央省庁再編等準備委員会を発足させ、通常国会で中央省庁再編の基本法の成立を期することとした72)。これを受け、準備委員会は最終報告に盛り込まれた内容を可能な限り忠実に法制化する方針で作業を進めていく73)。そうしたなかで、積み残された問題(財政と金融の分離)についての与党協議がようやく翌年1月20日に決着し、準備委員会による基本法案の作成は本格化していった。
2月17日には「中央省庁等改革基本法案」が閣議決定され、国会に提出される。この法案は、行革会議の最終報告の趣旨に則って行われる中央省庁等改革の基本的な理念や方針等を定めるものであった。同法案は衆院の「行政改革に関する特別委員会」、参院の「行財政・税制等に関する特別委員会」の審査を経て、自民、社民、さきがけの与党三党の賛成で6月9日に可決、成立する74)。野党が本会議の採決の際に述べた反対理由のうち、独立行政法人に関連する部分をみると75)、公明党は、対象となる独立行政法人が明らかにされずに政治決着の要素を残したこと、今後の改革を推進、監視する第三者機関の設置について政府が明確な対処方針を示していないことを指摘している。共産党は、独立行政法人制度は国民生活に関わる公共の分野を減量するという名で徹底的に切り捨てる仕組み作りを目指すものだとして、制度自体を厳しく批判した。民主党と自由党は独立行政法人それ自体にはふれていない76)。
こうして成立した基本法により、独立行政法人の創設を含め中央省庁等改革に関し必要な法案の立案等を担う機関として、中央省庁等改革推進本部(以下、推進本部)が設置される77)。同本部は総理を本部長、全閣僚を本部員とする構成で、独立の事務局も約150名の体制で設けられた。さらに、国会での附帯決議にもとづいて78)、本部長である総理に提言を行う第三者機関として「顧問会議」が設置されている79)。
(2) 中央省庁等改革推進本部の活動 ―対象業務・機関の決定
ところで、基本法が成立してから間もなく7月には参院選挙が行われ、結果、自民党は敗北し、橋本総理は辞任、小渕政権へと引き継がれた。参院選挙の前、すでに社民党とさきがけは閣外協力を解消していたため、小渕内閣は参院で過半数割れの単独政権として発足する。総理の交代により推進本部の本部長が交代することになったが、小渕総理は前任者の方針を引き継いだため、翌99年1月の法案大綱策定に向けて作業は粛々と進められていく。