与党三党はそれぞれの機関において検討を重ねたうえで、与党行政改革協議会(いわゆる「10者協」)において調整を図っていった49)。中間報告が示されてから最終報告が決定されるまでの間、連日のように与党内、特に自民党内で検討が重ねられることになる50)。夏の集中審議を含め、行革会議は中間報告までは「政治」からほぼ切り離された状況で審議が進められてきたが、その後の審議、特に秋の集中審議は、まさに政治のただなかで進められることになる51)。
9月11日には内閣改造が行われ、行革会議の会長代理となる総務庁長官には自民党の行革推進本部長だった佐藤孝行氏が就任する52)。9月17日の第29回会議では、与党への説明結果が水野事務局長から報告された後、今後の審議課題が検討された。そこでは各委員から意見開陳があったが、独立行政法人をめぐっては、職員身分について、「公務員」(芦田委員)、「新しい類型の公務員」(川口委員)、「当面(設置から5〜10年)は公務員の身分を保障」(水野委員)、「一律に非公務員としないほうがよい」(河合委員)、「公務員でないことを原則とすべき」(諸井委員)などの意見が示されたほか、渡辺委員からは公務員身分を持つ第1種から公務員身分を持たない第2種、第3種までの3類型の独立行政法人を設ける案が提示されている53)。また、対象機関・業務については、水野委員と飯田委員から、できるだけ具体的な事業のあてはめを行革会議で行うべきとする意見が出される一方、芦田委員からは各省庁、機関が労働組合の意見を聴きながら責任をもって検討、決定することが必要であるとの意見が出された。また、水野委員はすでに独立行政法人化すべき機関・業務を列挙しており、渡辺委員も先の三類型のなかで具体例をあげている。
9月24日には第1回の合同小委員会が開かれ、藤田主査による「最終報告案作成に向けての検討メモ」を素材にして独立行政法人の職員身分問題を中心に審議された。メモでは、少なくとも「原理論」としては独立行政法人の場合に従来通りの公務員ではありえないことがほぼ理解されたとしながら、「政策論」としてこれを純粋に貫くことには現実性がないことも大方の意見となっていると述べられている。第2回の合同小委員会ではNTTとJTの労組代表から民営化に関わる意見を聴取した後、再び独立行政法人の職員身分問題の検討が行われた54)。意見交換は事務局の「独立行政法人の職員の身分に関する検討(追加資料)」をもとにすすめられたが、その資料では原理論と政策論を埋める「暫定的措置」として、1]現在公務員であるものは移行後も身分を維持するが、新規採用者は非公務員とする、2]「当分の間」新規採用者も含めて公務員とする、との2案が提示されている。加えて渡辺委員から、公務員の概念を拡大解釈することで、制度の趣旨を損なうことなく独立行政法人の職員に公務員の身分を与えることも可能だとする意見が示された55)。