こうした論議を経て、中間報告をまとめるべく、8月18日から21日にかけて(第24〜27回会議)、のべ24時間におよぶ夏の集中審議が行われる。これに先立って、行革会議は8月11日に中央省庁再編に関する各委員の意見書(私案)の要旨を発表した43)。エージェンシー制度の導入については、芦田委員が職員の公務員身分の維持を条件に容認の姿勢を示したため44)、強い反対論はなくなっていたが、豊田委員(経団連会長)がJRに類似した全額政府出資の株式会社を想定するなど、独立行政法人のイメージには委員間で開きがあった45)。これら各委員の意見書も含め、総理からの要請で小委員会の主査である佐藤委員と藤田委員が集中審議のたたき台となる討議資料の作成に取り掛かっていた46)。
集中審議では主に4日目に独立行政法人問題が扱われる。審議は藤田主査が用意した「垂直的減量(アウトソーシング)を巡る問題点」と、事務局の「独立行政法人(仮称)制度構想(試案)」をもとに進められた。結果、制度設計ついては基本的に事務局試案が了承され、独立行政法人の制度導入はひとまず確定した。懸案の職員身分問題は、藤田主査案では「本来、国家公務員ではありえない」となっていたが、芦田委員が強い難色を示したため、中間報告では両論併記とすることで落ち着いた47)。なお、焦点であった郵政三事業については、簡保は民営化、郵貯は民営化に向けての条件整備、郵便は国営維持との結論に達したが、これが後に大きな反発を招くことになる。
夏の集中審議を経て、9月3日の第28回会議で「中間報告」が決定される。中間報告では独立行政法人制度の導入が了承されたことを確認したうえで48)、独立行政法人化の対象となるのは、1]社会経済・国民生活の安定等の公共上の見地から、その確実な実施が必要とされること、2]国が自ら主体となって直接実施しなければならない事務事業ではないこと、3]民間の主体に委ねた場合には必ず実施されるという保障がないか、または公共的な事務事業として独占して行わせることが必要なものであることの3要件を満たし、かつ、独立の組織とするに足るだけの業務量のまとまりがある事務事業とした。対象となる具体的な業務の決定は、個別業務ごとに検討を行うことが必要であり、最終的には各省庁・各機関が責任をもって検討し、決定する余地を与えることが適当であるとされた。これらを含め、組織や運営、評価方法などの基本は中間報告の別紙「独立行政法人の制度設計」に整理されており、これがその後の制度設計作業のベースになっていく。
(5) 職員身分問題の内定
中間報告の後は検討課題として残された事項を中心に審議が進められていったが、一方で、それまで表立った動きをみせていなかった与党三党は、中間報告で示された改革案への対応を本格化させていく。