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芦田委員の意見は、4月8日に連合の官公部門連絡会がエージェンシー制度導入に反対姿勢をとる方針を固めたのを受けてのものであった25)

委員の意見陳述が一巡した後で、行革会議は5月1日の第11回会議において「中間整理」を決定する。中間整理は各委員の意見陳述を集約したものであるが、エージェンシー化については芦田委員を除いて目立った反対意見がなかったため、「公的役割を終えた実施機能は廃止するか民営化。なお公的役割を残し、効率化を図るべきものはエージェンシー化し、政府をスリム化」、「一定の基準を決めて各省庁にエージェンシー化の実行を義務づけるべき」という形で意見が整理された。さらにエージェンシーの具体的な仕組みにふれたうえで、対象業務例として「当面は、収益性は低いが政府が扱ってきた業務で、権力行使や裁量の少ないもの」として、免許証の発給、パスポート、官庁営繕、登記、印刷、造幣、統計、特許審査、測量、国有財産、国立公園管理が例示され、自衛隊や国税庁は対象外、造幣は民営化とされた。この時点においてはかなり大規模なエージェンシー化が構想されていたわけである26)。ただし同時に、エージェンシーの概念をより明確にしてから検討する必要があること、外国の制度の直輸入には慎重な検討が必要であることなどが「問題点」として指摘された。なお、具体的な仕組みのなかで、後に最大の焦点となる職員の身分については、「職員は公務員。いずれは任期制、契約べースでの採用等を検討」とされている。

 

(3) 省庁ヒアリングと基本制度の構想

中間整理の後、行革会議は各省庁からのヒアリングに取りかかる。ヒアリングではエージェンシー制度の導入についての質疑も行われたが、ほとんどの省庁は消極的な姿勢をとるか、あるいはエージェンシーの概念や基本制度が明らかでないためコメントできないとする立場に終始した27)。こうしたやり取りをふまえて、行革会議では次回以降、改革に消極的な省庁に対しては、自発的な改革の代案の提示を求めることを確認している28)。しかし、それ以降のヒアリングも一部の省庁を除いてはエージェンシー化には冷ややかな対応が続き29)、特に郵政省は焦点の郵政三事業について民営化、独立機関化のいずれをも強く拒否する態度をとり、委員との激しい議論も展開された。こうした経緯もあって、まずはエージェンシー制度の骨格を明確にする必要から30)、自由討議が予定されていた5月28日に開催予定の第15回会議ではエージェンシー制度について集中的に論議を深めることになった。また、5月21日の第14回会議では省庁ヒアリングの後で、4月下旬にイギリス視察におもむいていた武藤会長代理からエージェンシー制度導入の経緯や効果などについて報告が行われている。

 

 

 

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